こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

全然大丈夫

otello2008-02-02

全然大丈夫


ポイント ★★★
DATE 07/11/16
THEATER 京橋テアトル
監督 藤田容介
ナンバー 233
出演 荒川良良/木村佳乃/岡田義徳/蟹江敬三
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ゆったりと時間が過ぎていくようなゆる〜い日常。夢に向かって奮闘しているわけでもない主人公の身の回りに大きな事件は起きず、時折小さなさざ波が起こるだけ。楽しいわけでもつらいわけでもないが、生きていかなければならない。漫然とした日々のなかでも、人と人とのつながりだけは大切にしていきたい。そんな、ついかまってあげたくなるような不器用な登場人物を温かく見守るカメラの優しさが、穏やかな気持にさせてくれる。


古本屋の息子・照男は怪談が大好きで、お化け屋敷を作るのが夢。ある日、父親が家出をし、幼なじみの久信が、あかりという何をやらせてもうまくできないマイナスオーラ全開の女を紹介、一緒に古本屋の手伝いを始める。


だらだらとした生活の中にも小さな悩みはあり、乗り越えようと頑張っている姿がいとおしい。照男のおじが言うように、命がけでやりたい目標がある人などあまりいるわけがない。ならば仕事はとりあえず糧を得るためと割り切って、趣味を充実させる。照男のホラーもあかりの個性的なタッチの絵もそこそこの年季を感じさせるが、プロとして認められるほど完成度は高くない。それでも好きなことをやっているという充足感と開放感を覚えている。その一方でこのままでいいのかという焦りも少しはある。30歳を目前にした男の「幸福な閉塞感」がユーモラスなタッチの中で非常にリアルに描かれている。


照男も久信もあかりが気になって誕生日プレゼントを用意したりするが、あかりはあっさりと骨董修復師と仲良くなってしまう。照男と久信の間に感情の爆発は一応あるが、むしろ友情を壊してまであかりを自分のモノにしようとはしない。何でも相談でき、一緒に遊んでくれる仲のいい友達。彼らにとってぬるま湯のような人生をお互いに肯定し会えることが一番大切なのだ。ラスト、奈良の名所を観光して回る照男と久信の輝くような笑顔に、男同士の居心地のよさがあふれていた。


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