こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アメリカン・ギャングスター

otello2008-02-04

アメリカン・ギャングスター AMERICAN GANGSTER


ポイント ★★★*
DATE 08/2/1
THEATER THYK
監督 リドリー・スコット
ナンバー 26
出演 デンゼル・ワシントン/ラッセル・クロウ/キウェテル・イジョフォー/キューバ・グッディング・ジュニア
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


仲買人を通さず、直接製造者から買い取って消費者に売るという、ユニクロのようなシステムを麻薬密売組織に持ち込んだギャング。正義感ゆえに賄賂を受け取らず警察組織からはみ出してしまった刑事。犯罪者と警察官という正反対の人間をあらゆる点で対立項にし、人生が交差するまでをリアリティたっぷりの映像で描く。2人とも仕事に関しては非常に勤勉で、結局似たもの同士、立場の違いがなければ親友になれたかも知れないと思わせる骨太の切り口が古典的でかえって新鮮だ。


'60年代末、NYのハーレムで上質の中国製麻薬を売りさばいてたちまちのし上がったフランク。買収用の現金に手をつけなかったことから麻薬取締部門にスカウトされたロバーツ。ロバーツはベトナムからの軍用機に大量の麻薬が積みこまれているという情報を入手する。


'70年前後のニューヨークの街並みや人々の暮らしなどのディテールから、強制捜査に入るときの警官の息遣いまで聞こえてくるようなカメラワークまで、臨場感にこだわった作りこみは見事だ。全編クールな寒色を基本に甘ったるい感情を一切配した男の世界。まるで「フレンチ・コネクション」のような映画のトーンは、この時代へのこだわりがうかがえる。


早起きで信心深く家族を大切にする上、新たな発想と行動力をもつフランクは切れ者のビジネスマンのよう。一方のロバーツは乱れた女性関係と離婚裁判をかかえているが、職務には忠実で命も惜しまない。コインの表裏のような2人は取調室で初めて言葉を交わす。賄賂に応じないロバーツに対し、フランクはこんな刑事もいたのかと驚いただろう。ロバーツもまた私生活は品行方正なフランクに魅力を感じていたはず。そして共通の敵である汚職警官検挙で協力することで、お互いこそが捜し求めていた理想のパートナーだったとやっと気付く。運命の皮肉、それを乗り越えて信頼関係を結ぶエピローグには少し救われた気がした。ただ、フランクが最後に銃弾を撃ちこんだ相手は誰だったのだろうか。。。


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