こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウォーター・ホース

otello2008-02-05

ウォーター・ホース THE WATER HORSE

ポイント ★★
DATE 08/2/2
THEATER WMKH
監督 ジェイ・ラッセル
ナンバー 27
出演 アレックス・エテル/エミリー・ワトソン/ベン・チャプリン/デイビット・モリッシー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


緑と水が豊かで人々の心も素朴なスコットランド。その風景は伝説や神話の物語が本当に起きた事のように思わせる不思議な説得力がある。孤独な少年とおびえきった希少動物が交流し、大人の目を逃れて小さな冒険を続けるうちに奇跡を起こすのは「E.T.」そのもので、彼らは空を飛ぶ代わりに湖水に潜る。しかし、キャラクターの設定は物分りの悪い大人と彼らの協力者、愛情だけは強い母親というように通俗的で、あくまで子供向け。大人が見るには物足りない。


第二次大戦中、スコットランドに住むアンガスは海岸で珍しい卵を見つける。卵からは小さな怪獣が孵り、アンガスはクルーソーと名づけて密かに育てる決意をする。やがて英国軍がアンガスの屋敷を宿舎として接収し、成長したクルーソーを隠しきれずに湖に放す。


戦争に行った父の帰りを指折り数えて待つアンガス。知識や生き方だけでなく夢を持つことの大切さも父から教わった。父の書斎に入り浸り、そこでクルーソーを飼おうとする。そして、親のないクルーソーの面倒をみることで自分もまたクルーソーに信頼を教え込み、言葉は通じなくてもお互い固い友情で結ばれていく。日ごと数倍に成長していくクルーソー、軍人たちの目をごまかすための苦労が笑いを誘うが、たとえばクルーソーが出した膨大な量の糞の処理に奔走する姿などを挿入すればもっとリアリティが出たはずだ。


クルーソーがアンガスに別れを告げて海に帰っていくシーンで、アンガスは大好きだった父の死という現実を受け入れる。つまり、クルーソーこそ、父がアンガスに贈った最後の贈り物。それは「夢を信じろ」というメッセージだ。クルーソーという夢をから醒めた瞬間、アンガスは少年時代を卒業したのだろう。そこで彼は、夢に向かって走り続けることは、たとえその夢が叶わなくても、少なくとも自分は変わるということを学んだに違いない。まあ、年老いたアンガスの姿を見ているとホラ吹きジイサンが若者をからかっているだけという感じにも見えなくはないが。。。


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