こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャンパー

otello2008-03-06

ジャンパー JUMPER


ポイント ★★
DATE 08/3/1
THEATER WMKH
監督 ダグ・リーマン
ナンバー 51
出演 ヘイデン・クリステンセン/サミュエル・L・ジャクソン/ジェイミー・ベル/ダイアン・レイン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


思いがけない超能力を得たとき、最初は驚きもてあます。やがて制御する方法を覚えるとその能力を他人に知られないように隠す。そして部屋いっぱいのカネを集め、自分を蔑んだ友人に報復する。未熟な主人公のたどる道は、そんな欲望に素直に従うというリアリティにあふれている。だが、彼には正しい力の使い道を導いてくれる師がおらず、虚栄心を満たすことに終始しているため、若者の成長物語も敵対組織とのバトルアクションも中途半端に終わっている。まあ、「自分探し」などという安易な流行路線に乗らなかったことは評価できるが。


高校時代に偶然瞬間移動能力を身につけたデヴィッドは、その後10年NYで“ジャンパー”としての自由でリッチな生活を謳歌していたが、銀行からカネを盗んだことから、ジャンパー抹殺組織“パラディン”のローランドに追われる。


デヴィッドは、「選ばれし特別な者」と自覚して能力をより崇高な目的のために使うという、スーパーヒーロー物語の定石を覆す。その分、普通の人間が思い浮かべるようなせこい使い方しかしないので、主人公としての魅力は非常に薄い。唯一、囚われた恋人を救うときだけは危険を顧みずに虎穴に入ろうとするが、動機は正義や平和ではなくあくまで個人的なもの。むしろ彼を追うローランドのほうが能力を悪用するジャンパーを取り締まるのだから、その行為は合理的だ。


失踪した母と再会し彼女も同じくジャンパーだったという秘密を知ったデヴィッドは、己の運命と未来に対して固い決意をする。それは恋人を自分の人生に巻き込むということ以外には分からない。この曖昧な結末は続編への布石とも思えるが、続きを期待する観客はあまりいないはずだ。それにしてもデヴィッドと先輩ジャンパーのグリフィンはいったい何のために東京に来たのか。地下鉄銀座駅を出たらそこは渋谷ど真ん中だったというシーンには思わず噴き出してしまったが、まさかこれもテレポーテーションだというのだろうか。。。

↓メルマガ登録はこちらから↓