こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビルマ、パゴダの影で

otello2008-03-17

ビルマ、パゴダの影で IN THE SHADOW OF THE PAGODAS


ポイント ★★★
DATE 08/1/29
THEATER TCC
監督 アイリーヌ・マーティ
ナンバー 24
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


黄金に輝く仏塔のそばをオレンジ色の僧服に身を包んだ僧侶の一団がゆっくりと歩く。そんな平和でのどかな風景が一般的なビルマのイメージとして定着しているが、実は長年にわたって軍事政権が民主化運動を抑圧し、少数民族に対し厳しい弾圧を加えてきたという事実。アウンサンスーチーらの活躍で、民主化運動については外国メディアにも報道され人権問題にも発展しているが、少数民族についてはほとんど伝えられないまま。カメラはタイ国境地帯に拠点を置く反政府ゲリラや、ジャングルに難民として逃れてきた少数民族に焦点を当て、知られざるビルマの実像を描く。


観光用プロモーション映像撮影と偽ってビルマに入国したアイリーヌ・マーティの撮影隊は、政府関係者の監視の目を盗みホテルを抜け出し、イスラム教徒、カレン族、反政府武装ゲリラ、シャン族といった軍事政権から敵視されている人々に接触する。


アイリーヌのインタビューを受ける人々は淡々と受け答えする。特に親を殺された子供たちは、過去の悲しみに胸を痛めているにもかかわらず日々の生活に追われ、粗末な教室で勉強をする。将来の夢を尋ねられたとき、男の子は兵士、女の子は教師と、自分の身近にいる大人たちをあげるが、彼らの本心は兵士になって敵を倒すか強い兵士を養成することなのだろう。40年にわたる軍政で故郷を焼き払われ、難民キャンプが故郷になってしまった人々。彼らにとっては民主化運動より普通に生活することこそ最優先されるのだ。


さらに一行は麻薬栽培で有名な黄金の三角地帯にまで出向く。そこは軍が管理し彼らの活動資金源となっている。外国人観光客が落とすカネも軍政権を支えている。都市部で行われ、外国メディアに報道されている反政府デモに平気で発砲する兵士たちが、外国メディアの立ち入らない土地でどのような行為をしているのか、少数民族のインタビューを聞くまでもなくその残虐さは想像に難くない。一日も早く民主化が実現することを願うばかりだ。


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