こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダージリン急行

otello2008-03-19

ダージリン急行 THE DARJEELING LIMITED


ポイント ★*
DATE 08/3/15
THEATER チネチッタ
監督 ウェス・アンダーソン
ナンバー 65
出演 オーウェン・ウィルソン/エイドリアン・ブロディ/ジェイソン・シュワルツマン/アンジェリカ・ヒューストン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


血のつながりゆえに切っても切り離せない関係。友情でも愛情でもなく、性格を知り尽くしているがゆえの微妙な距離感に、どこかギクシャクしながらもその存在を認めざるをえない。そんな自己主張の強い3人の兄弟が列車の旅を通じてもう一度家族の絆を見つめなおそうとする。しかし、方向性とは裏腹に映画はインドの大地を迷走し、どこが進むべき道なのかを示してくれない。それは見たものの判断に任せているのだろうが、消化不良感しか残らなかった。


フランシス、ピーター、ジャックの3人は、インドを走るダージリン急行に乗車する。列車の中でさまざまな騒動を起こしながらも、ヒマラヤの修道院にいるという母親に会いに行こうとする。


食事のメニュー、父親の遺品、入れ歯といった些細なことで3人は口論を始め、仲直りというより、お互いのいやなところを再確認しているかのよう。目標に向かって3人が力をあわせわけでもなく、ただただ幼稚な兄弟げんかをしているだけ。いない人間の悪口や秘密をばらしたり、コミカルなシーンもあるのだが、3人のキャラを象徴しているわけでもない。普通、3人いれば誰か感情移入できる人物がいるものだが、外見が違うだらしない人間が3人いるだけのような設定では、それぞれのエピソードも精彩を放つことなく、インドを舞台にしていることがまったく生かされていない。


列車を放り出された3人は運河で溺れた少年を助けようとするが、一人を死なせてしまう。少年の葬式でまだ仲のよかったころの父の葬儀を思い出すが、ケンカ別れした原因は明かされないまま。母のいる修道院を目指すが、そこでも彼らは求める答えを得られなかった様子。ラスト、走り出した列車に飛び乗るために3人はすべての荷物を捨て去るが、それは過去との決別を意味するのか。観客はホームに捨てられたスーツケースのごとく列車を見送るのみで、結局3人の旅からは置き去りにされてしまい、彼らが見たものを目にすることはできない。


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