こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブラブラバンバン

otello2008-03-20

ブラブラバンバン


ポイント ★★
DATE 07/12/13
THEATER 映画美学校
監督 草野陽花
ナンバー 254
出演 安良城紅/福本有希/岡田将生/足立理
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


音楽は、好きなように感じたままに演奏する。自由に発想し、自分の中の想像力を最大に生かして楽譜を解釈することの大切さを訴える。しかし、音楽が表現しようとする感情についつい流されてしまい、自分を失ってしまうヒロインならばコメディにするしかないはず。それがエロティックなメロディならば性的興奮を抑えきれないとなればなおさらだ。映画はひたすら表情の硬い女優を主演にしたせいでせっかくの素材を笑いにまで昇華しておらず、結果としてカタルシスを得るまでには至らなかった。


高校に進学したばかりの白波瀬はホルンを吹く芹生と出会う。合わせてトランペットを吹くと、芹生は突然正気をなくし白波瀬を襲う。これをきっかけに白波瀬は友人とブラスバンド部を結成、芹生を誘う。


心を解放するとコントロールが効かなくなるという芹生の特質を消化し切れていない。彼女は音楽を教えてくれた父親の死をまだ受け入れられないのだろう。それに関してはさらりと触れるのみで、彼女の人を寄せ付けないようなキャラクターの説明とは程遠い。もちろん中学時代のトラウマが彼女を集団での音楽から遠ざけているのは理解できるが、そのあたりがシリアスになりすぎて作品の方向性とマッチしているとはいいがたい。


白波瀬らは芹生を指揮者にしてコンクールに臨み、地区予選を勝ち抜いて全国大会を目指す。このあたりも部員たちに音楽に対する情熱が足りず、生ぬるい仲間意識を友情と勘違いしているだけ。厳しく管理するより自主性に任せたほうが力を合わせたときのパワーが増幅するのは分かる。芹生が言うように楽器奏者は「一枚の絵の中の絵の具。主張はしても周りとの調和も考えなければならない」はず。だが、肝心の指揮者が気持ちの爆発を抑えきれないでどうするのか。どうせならクライマックスの「韃靼人の踊り」で自ら指揮台の上で踊るようにタクトを振る芹生の独りよがりを突き抜けるまで強調してほしかった。


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