ポイント ★★
DATE 08/2/28
THEATER ヤクルトホール
監督 本木克英
ナンバー 50
出演 田中麗奈/豊川悦司/加瀬亮/福田麻由子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
かわいい子犬も急激に大きくなり、あっという間に老いる。言葉はしゃべれないけれど全身で感情を表現する犬と、飼い主である少女の成長を通じて、犬は人間と違って愛された記憶を決して忘れないことを語る。しかし、ここに登場する犬はいわゆる「名犬」の類ではなく、ただ「あっち向いてホイ」が強いだけの普通の犬で、エピソードに劇的に盛り上がるような事件はなく、一方でリアリティが乏しい展開。犬が人間にとってどうしてかけがえのない存在なのか、人間が犬にとってどういう存在なのかがほとんど伝わってこなかった。
両親と暮らすあかりは、庭に迷い込んできた子犬にソックスと名づけ飼いはじめる。程なく母親が急死し、あかりは父とソックスの2人と1匹で暮らし始める。その後父の転勤に伴い、ソックスは友人の家に預けられる。
過剰に犬を怖がるあかりの父親が慣れない手つきで料理し、ネクタイで自分の口をぬぐったりもする。そのあたり、最近仕事を選ばず映画に出まくっているトヨエツが必死にコミカルに演じようとしているが、どこか物悲しさを感じてしまう。もちろんこの父親もソックスを家族の一員として受け入れるようになるが、そこまでに至るソックスとの思い出になるような共有体験がないのが致命的だ。また、犬を預かった星くん一家は、星くんのパリ留学のために家を空けるのだが、ソックスをつないだまま家の玄関に置いてきぼり。ソックスがうまく脱出したからよいが、何日も放置してよいものだろうか。
やがてあかりは大学を卒業して家を離れ、ソックスと触れ合う時間も少なくなり、恋人となった星くんと過ごすようになる。その間、ソックスは星くんのセラピーをしたりもするが、大過なく老衰死。まあ、飼い犬の一生などこの程度のものなのだろうが、それでも飼い主との絆が不可分に思えるような強烈な出来事があったはず。そこをきちんと描いていれば、最後に付け足しのように死んだ母からの手紙をソックスの犬小屋から引っ張り出してくるなどというあざとい手を使わずに済んだはずだ。。。