こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

黒い家

otello2008-04-06

黒い家


ポイント ★★
DATE 08/3/10
THEATER 角川
監督 シン・テラ
ナンバー 60
出演 ファン・ジョンミン/カン・シニル/ユソン/キム・ソヒョン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


知能は高いにもかかわらず感情の一部が欠落し、自分も含めて人を傷つけることに何の感慨も覚えない。まるで冷徹な死にとりつかれた果てしない暗黒のような純粋な意思、しかし本人にはそれが悪と呼ばれる性質のものであるという自覚はない。そんな人間が保険金詐欺のうまみを知ったとき、恐るべき連続殺人が起きる。映画は、カネのためなら平気で人を手にかけ、常識では理解できない思考と行動力をもつサイコパスと呼ばれる人間を通じて、邪悪とは何かを問う。


保険会社の査定員・ジュノはチュンベという客に呼び出されるが、そこで見たのはチュンベの息子の首吊り死体、ジュノは保険金目当てにチュンベが息子を殺したと思い込む。しかし、チュンベも妻のイファに両腕を切られて、高額の保険金を請求される。


カネを得るために自分の指を噛み切る。時には家族さえ手にかけるが、犯罪と疑われるようなヘマはしない。執拗にジュノに付きまとい保険金を払わせようとするチュンベの、何を考えているかが分からない無表情が非常に不気味だ。その後ジュノはチュンベが殺人犯であるという確信を深めていくが、実際にはイファがチュンベを操って保険金を騙し取っていることになかなか気付かない。そのあたりのミステリータッチの演出がかろうじてB級ホラーになる寸前で節度を保っている。


やがて本性を現したイファが交渉人を殺し、ジュノの恋人をさらう。邪魔するものは皆殺し、もはや狂気の塊と化したイファとジュノは闘うが、すんでのところジュノは警察に救われる。焼け死んだはずのイファを見てチュンベは涙を流すが、何ゆえチュンベはそこまでイファに忠誠を誓っていたのかを描いていればもっと奥の深い作品になったはず。また、原作では嗅覚障害が原因でイファはサイコパスになったはずで、その説明もなく消化不良に終わっている。最後の、病院でジュノとイファが再び殺しあうシーンは蛇足以外の何ものでもなく、いたずらに上映時間を長くしてしまった。


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