こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブラックサイト

otello2008-04-13

ブラックサイト UNTRACEABLE


ポイント ★★*
DATE 08/2/12
THEATER ソニー
監督 グレゴリー・ホブリット
ナンバー 37
出演 ダイアン・レイン/ビリー・バーク/コリン・ハンクス/ジョゼフ・クロス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


無邪気な好奇心が人を殺すということが分かっていても、閲覧者はただ面白いものが見たいというだけでアクセスする。ネット社会に蔓延する他人の痛みや悲しみに対する恐るべき無関心。映画は猟奇的犯罪者を結果的に助けることになる無数の人々の悪意なき行動に警鐘を鳴らす。日本でもかつて猫を殺す現場写真をリアルタイムで公開するという犯罪があっただけに、罠にかかった猫が衰弱死していくというプロローグは非常にリアリティがあった。また、美しかったダイアン・レインが、目尻のシワや皮膚のたるみを隠さず仕事に忙殺される捜査官を熱演している。


緊縛された男が徐々に死んでいく映像がネットに流れる。そのサイトはヒット数が上がると男がより早く死ぬという仕組みになっている。FBIネット犯罪捜査官のマーシュは犯人を追うがまったく足取りをつかめない。さらに第2、第3の犠牲者が出る。


1人目は失血、2人目は白熱電球で焼き、3人目は硫酸風呂で溶かすという念の入った殺し方。それもじっくりと時間をかけて苦しむ様子をネットでライブ中継するという趣味の悪さ。さらにアクセス数によって死ぬ時期が早まるという仕掛け。犯人はただの異常者ではなく、ネットに詳しく他人を操る術と行動力を持った非常に高い知能を持った人間で、そのサイトの存在を公表するとさらに犠牲者の死が早まるためにFBIは市民に協力を求められないのに、それでも口コミで広がっていくというジレンマを衝く。


犯人の動機は、自分の父親が自殺した瞬間の映像がテレビで放送され、さらにネットで流されたことで傷つけられた家族の名誉を回復しようというもの。そのあたり、映像や画像を後先のことを考えることなくネットで公開する昨今の現実に対して強烈な批判になっている。それでもやはり人間の好奇心を蓋をすることはできない。結局、マーシュ自身が犯人に捕らえられるがとっさの機転で危機一髪逆転、犯人を射殺する。しかし、犯人を倒すだけでは解決しない、ネット社会の暗黒部分がより浮き彫りにされた。


↓メルマガ登録はこちらから↓