こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

王妃の紋章

otello2008-04-18

王妃の紋章


ポイント ★★
DATE 08/4/14
THEATER WMKH
監督 チャン・イーモウ
ナンバー 91
出演 チョウ・ユンファ/コン・リー/リウ・イエ/ジェイ・チョウ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


黄金に輝く宮殿の内装と王族の衣装、広場に敷き詰められた菊の花、忍者のような身のこなしで政敵を急襲する暗殺部隊、雲霞のごとく押し寄せる金の鎧と迎え撃つ銀の鎧。スクリーンに投影されるすべてのものにとてつもなくカネがかけられ、人海戦術が取られる。その目を見張るばかりの圧倒的な物量に気圧される。しかし、そのゴージャスな舞台で繰り広げられる肉親同士の愛憎劇は非常に陳腐で、何より妻や子供すら疑ってしまう王の疑心暗鬼の苦悩の描写がない。また、王妃といえどもほとんど自由はなく政治の道具に過ぎないという悲しみも希薄だった。


絶大な権力を握る王には祥、傑、成の3人の王子がいるが、皇太子の祥は器量不足で傑が密かに王位を狙っている。その裏で糸を引く王妃の陰謀を察した王は、侍医の蒋に命じて王妃に毒を飲ませる。


一見平和な家族もひと皮向けばドロドロ、祥は王の庶子で王妃と血のつながりがないのをいいことに彼女とデキていたり、蒋の妻が祥の実母だったり、さらに蒋の娘と祥が愛し合っていたり。王を中心に張り巡らされた血縁の糸は、王の地位の安泰を図るどころか、紛争の火種になっている。しかも、王は彼らの企みを知っているのに未然に防ごうとはせず、事を起こさせてからつぶすという戦略をとる。王に忠誠を誓っていた蒋まで暗殺するなど、結局、誰も信じないゆえに誰からも信じてもらえないというジレンマを抱えたまま、王は孤独を深めてゆく。


そして重陽節に傑の謀反が決行されるのだが、その前に蒋の妻子が宮殿に駆けつけかと思うと、王の忍者軍団に襲われたり王妃の護衛に助けられたりと、敵味方入り乱れての大乱戦。さらに金鎧と銀鎧の大軍団が弓矢盾矛剣を使っての戦闘シーンは壮観だ。もはやこのあたりになると人間を描くというより、壮大な見世物としての価値だけを追求しているようだ。ただ、せっかくの大スペクタクルなのに、映像に深みやシャープさがなく、古いビデオを見ているような違和感を覚えたのは映画館のせいだろうか。。。


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