こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スパイダーウィックの謎

otello2008-04-27

スパイダーウィックの謎 THE SPIDERWICK CHRONICLES


ポイント ★★★
DATE 08/3/11
THEATER PM
監督 マーク・ウォーターズ
ナンバー 61
出演 フレディ・ハイモア/サラ・ボルジャー/メアリー・ルイーズ・パーカー/デヴィッド・ストラザーン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


帰れといわれれば入ってしまい、読んではならないといわれれば読んでしまう。そんな人間の好奇心が開けてしまった異界への扉。そこに住むのはチャーミングで害のないものから人間界の崩壊を目論む異形の怪物までさまざまだ。映画は禁断の書の封印を解いてしまったために起きる悪い妖怪と子供たちの戦いを中心に、親子の愛と家族のあり方を問う。強調されのは父親の不在。子供たちがもっとも信頼を置くべき一家の大黒柱を失ったとき、残された家族はどうなるのかが興味深い。


郊外の一軒家に引っ越してきたジャレッド、サイモン、マロリー姉弟。その夜、ジャレッドは隠し部屋で大伯父・アーサーが遺した古い本を見つける。それは妖精たちの細かな観察記録で、その本が開かれたことで悪意を持ったゴブリンたちが動き出す。


本の秘密を知るルシンダおばさんは幼いころ父・アーサーを風の妖精に連れ去られて心に傷を負っている。ジャレッドは父親との思い出を大切にしていて帰りを待ちわびているが、実は他の女に走って戻ってこない。ルシンダおばさんはアーサーの面影を80年間忘れられず療養所で妖精たちと穏やかに暮らす日々だが、ジャレッドは自分がまいた種でという理由もあるが家族を守るために立ち上がる。このあたり待つだけの女の子と行動する男の子の役割が明確に区別されている。


やがて、結界を破ったゴブリンたちが一家を襲うが、家族の協力ととっさの機転で撃退し、家に平和を取り戻す。その際ジャレッドは父に化けた妖怪の正体を見破って刺すが、これは自分たちを見捨てた父の代わりに自分がこの家族を支えていくという決意の表明。また、時間の止まった妖精界から80年ぶりに戻ったアーサーは、自分よりはるかに年老いたルシンダにショックを受けるが、幼かった彼女を置き去りにした後悔がもう一度、そして永遠に離れないという運命を選択する。父を乗り越えなければならない男の子と、父の記憶が色あせない女の子。息子と娘の父への思いが濃厚に凝縮されていた。


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