こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

あの空をおぼえてる

otello2008-05-04

あの空をおぼえてる


ポイント ★*
DATE 08/4/30
THEATER WMKH
監督 冨樫森
ナンバー 104
出演 竹野内豊/水野美紀/広田亮平/吉田里琴
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愛し合っていた一家の幼い妹が不慮の死を遂げたとき、彼女の両親は喪失感から立ち直れず、兄はそれを受け入れられない。悲しみはみな同じなのに、落ち込んだ両親を励まそうと妹の代わりになって寒々とした食卓を元気付けようとする小学生の兄の姿が痛ましい。深く沈みこんだ現在と明るさにあふれていた過去の対比の中で、時間だけが切り裂かれた心を癒していく。ただ、幸せだったころの記憶は、作り物めいたエピソードと過剰な笑い声に彩られ、見ているほうが恥ずかしくなる。もう少しまともな脚本はできなかったのか。


深沢家の兄妹が交通事故に遭い、兄の英治は助かるが妹の絵里奈は逝ってしまう。退院後、家に戻った英治は絵里奈の不在を信じられず、両親は立ち直れないまま。やがて母親のおなかの赤ちゃんが大きくなっていく。


頭では理解していても心が拒否し、ふたりで遊んだ楽しかった思い出に浸る英治。それを映像化し、まるで今も絵里奈がそこにいるような錯覚を与える。この現実との落差が見せ所なのだが、あまりにもわざとらしい演出が完全に映画をぶち壊している。その原因は絵里奈の異常なまでのハイテンション。いかにも安物ホームドラマに出てくる「大人が考えた理想のおてんば娘」の典型で、こんな役を演じさせられた吉田里琴という少女がかわいそうだ。


ケガが完治した英治は絵里奈と写真を撮った山にひとりで登り道に迷う。そして迎えに来た父と抱きしめあいやっと和解する。英治には、父が自分より絵里奈のほうを大切に思っていたということがずっと心に棘となって突き刺さっていたのだ。しかしそのシチュエーションを解決する過程は、英治が絵里奈に書いた手紙を両親が読んで両親が英治の気持ちを知るなど、とってつけたような不自然な展開だ。結局、親は子供を等しく愛していると知って英治はやっと絵里奈の死を乗り越えるが、そこでも絵里奈にあてた手紙を風船に結び付けて空に放つと、絵里奈の姿になって天に昇っていくという安っぽさ。小学生向けの映画だった。


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