こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

僕の彼女はサイボーグ

otello2008-06-05

僕の彼女はサイボーグ


ポイント ★★
DATE 08/5/31
THEATER WMKH
監督 クァク・ジェヨン
ナンバー 130
出演 綾瀬はるか/小出恵介/桐谷健太/吉高由里子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


未来の年老いた自分が、感情をプログラムされたサイボーグを現在の自分に送るというファンタジーだからといって、ディテールを疎かにしすぎているのではないだろうか。人間のように行動する一方で都合が悪くなるとロボットに戻る。チャーミングに振舞うと思えば突然表情を消す。酒を飲むと陽気になって踊りだすが、危害を加える相手には容赦なく暴力を振るう。このちぐはぐなスタンスは未熟なプログラミングが原因なのかもしれないが、物語の展開にあわせて都合よく使い分けているようにしか見えない。結局、ラブストーリーとしてもコメディとしても消化不良で、廃墟となった東京の姿だけが妙にリアルで浮いていた。


20歳の誕生日に奇妙な女の子と一日を過ごしたジローは、翌年の誕生日にも同じ女の子と再会する。彼女は60年後からやってきたサイボーグで、不幸な事件からジローを守るように命令されていた。


彼女は美しい外見と巨大なパワー・演算能力を持ち、ジローの日常生活は一変する。しかし、ジローは彼女の存在を隠そうとはせず、むしろ見せびらかすかのように連れまわす。普通ならヤバそうな事件に巻き込まれたジローを彼女が助け、危機を一緒に乗り越えようとするが、2人のぬるい日常が漫然と描かれるだけだ。出来事といえば、彼女のファッションショーと、ジローが彼女に気持ちが伝わらずにイライラするくらい。何かが起こりそうという予想を裏切ることでその先に期待を持たせようとするが、試みは空振りに終わっている。


そしてとって付けたように大地震が発生、ビルの下敷きになった彼女が自らの下半身を引きちぎってジローを救うのだが、そのあたりも屋上屋を重ねるようにやたらテンポがのろくて、自己犠牲を通じてジローと彼女のお互いを思いやる心が通じるまでに時間がかかりすぎ。さらに3段構えの後日談が用意されているが、もはやここまで来ると驚きもなく、蛇足以外の何者でもない。プロローグとの整合性を持たせるために付け足したようなエピローグでは、人を愛する気持ちは伝わってこなかった。



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