こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リボルバー

otello2008-06-24

リボルバー REVOLVER

ポイント ★*
DATE 08/6/21
THEATER 109KW
監督 ガイ・リッチー
ナンバー 149
出演 ジェイスン・ステイサム/レイ・リオッタ/ヴィンセント・パストーレ/アンドレ・ベンジャミン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


スタイリッシュな映像と謎めいた登場人物、過去の格言を引用し頭脳を駆使して悪党を手玉に取る。さらに二転三転する展開にアニメーションまで加えて、新感覚のバイオレンス&ミステリー&アクション&サスペンス映画にする予定だったのだろう。しかし、大掛かりな仕掛けで観客をだますつもりだった脚本家が、結局一生懸命考えたプロットに収拾が付かなくなってしまい、物語の後半は主人公がアイデンティティクライシスに陥って延々と無意味な禅問答を繰り返す。おまけに彼の仇敵まで分裂した別人格に悩まされた挙句、自己崩壊を起こしてしまう始末。テーマを知的なコンゲームに絞るべきだった。


7年間の服役中チェスとペテンを学んだジェイクは、出所後マカというギャングのカジノで勝負に出て大金を得る。マカが報復に出たところザックとアヴィという2人組に救われて協力することを求められる。彼らはマカの麻薬を盗み、更にギャングの同士の取引の現場を襲う。


ザックとアヴィはなぜかジェイクの一歩先を常に読み、ジェイクを思い通りに動かす。それだけでなくマカや中国系ギャングも操り、巧みに相打ちさせる。この2人こそ獄中でジェイクにチェスとペテンを教えた張本人で、ジェイクが2人のアイデアを融合させて作り上げたプランを横取りした上でジェイクに実行させるという狡猾な存在だったというのがオチなのだが、ギャングたちも恐れるゴールドという黒幕を実在するかのように偽装したところが目新しい。ギャングたちはゴールドの影におびえ暴走した上で自滅する。だが、まさにそこがジェイクの練ったプランのミソなのに、ジェイク自身がその陥穽に落ちるといううお粗末さだ。


真実が分からないままずるずると運命に引きずられるように事件に巻き込まれていく不安、選択した結果が実は相手の思う壺だったという悔しさ、そして自分の頭で考えれば考えるほど混乱していく矛盾。犯罪を通じて人間の深層心理を読み解く試みは野心的だが、監督が途中で投げ出してしまった様な印象を受ける。


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