こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミラクル7号

otello2008-07-01

ミラクル7号 長江7号


ポイント ★★*
DATE 08/4/28
THEATER ソニー
監督 チャウ・シンチー
ナンバー 102
出演 チャウ・シンチー/シュー・チャオ/キティ・チャン/ラム・ジーチョン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


貧乏ゆえにいじめられても、正直に生きるものは尊敬される。そんな説教くさい話は今どき誰も聞いてくれない。ならばファンタジーとコメディというオブラートでくるみ、CGと特撮で見せる。チャウ・シンチーは孤独なETと恵まれない少年の友情という手垢のついたストーリーを、あらゆる劇映画のジャンルをごった煮にしたようなスタイルで描く。思い付きをつなぎ合わせた節操なさが逆に作品に活力を与え、テンポのよさで最後まで飽きさせない。


金持ち子女向け私立校に通うディッキーは、学校のいじめられっ子。建築現場で働く父は優しいが学校で流行っている犬型ロボットを買ってくれない。そんな時、父がUFOの忘れ物の緑色のボールを持ち帰るが、夜中に犬の顔を持つ軟体動物に変身、ディッキーはそれをミラクル7号と名付ける。


廃屋の狭い部屋でディッキーとふたりで暮らす一方、高級車による送り迎えが普通の小学校に彼を通わせる父。希望だけが生きる糧といってもいいくらいの貧しさだ。そこに現れた7号はディッキーの夢を実現する魔法のペットなどではなく、意気地なしの役立たず。だからこそ、ディッキーは7号のために強くなろうとする。夢の中では7号のパワーでいじめっ子を見返すが、現実では7号のどうしようもない弱さが逆に彼らの心を解きほぐし、友人として認めさせるきっかけになるのだ。目に見えるものは荒唐無稽でも、登場人物が織り成す感情は非常にリアルだ。


やがてディッキーが7号に夢中になるあまり勉強に手が付かないのを見て、父は7号を取り上げる。そしてその日、父が工事現場で事故にあう。そこで初めて7号は人間にない能力を使うが、自らは精力を使い果たしてしまう。元気になった父とディッキーの看護もむなしく7号は息を引き取り、父子は7号の遺志を受け継いで生きることに積極的になる。最後に大勢の仲間がUFOでやってくるが、7号は生き返らない。甘いハッピーエンドにせずにディッキーに人生の厳しさを知らしめることで、物語はより多くの余韻を残す。


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