こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カメレオン

otello2008-07-09

カメレオン

ポイント ★*
DATE 08/7/5
THEATER チネチッタ
監督 阪本順治
ナンバー 162
出演 藤原竜也/水川あさみ/塩谷瞬/豊原功補
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


女占い師の元に突然現れる陰を引きずった男という、かつて一時代を築いた東映セントラルフィルムのようなノワールな雰囲気を漂わせたオープニングに惹かれるものがあったが、現在の藤原竜也には松田優作のような存在感を期待するのは酷というものだろう。暴力に彩られた経歴と抜群の頭脳と洞察力を持っていることはよく分かるが、カメレオンというほどの偽装ができるわけではない。さらにリアルでも大げさでもない中途半端なアクションで茶を濁す。そして極めつけは破綻してしまったストーリー。構成も細部も疎かにしたいい加減な脚本で映画を作るとこういう結果になるという見本のような作品だ。


ゴローは仲間と共にケチな詐欺を繰り返していたが、ある日地下駐車場で政界スキャンダルの証人が拉致される現場に遭遇、その場面を録画したDVDを仲間の一人がTV局に売り込んだことから謎の組織に命を狙われる。他の仲間が全員拉致されと知ったゴローは恋人のケイコと逃亡する。


ゴローの体には確かにキレはあるのだが、格闘や銃撃シーンのゆるさはなんなのだろう。CGやワイヤーに頼らないのはいいが、そこにはスピードもスリルも新鮮さもない。笑いを取ろうとしているわけでもなさそうだ。おまけに物語に直接関係のない老人たちが出てきて緊張感を奪う。やがてゴローとケイコは追い詰められ、ケイコは銃弾の餌食になるがゴローはかろうじて生き延びる。


復讐に燃えるゴローはやくざから拳銃を強奪、組織に単身乗り込む。このあたりも相変わらず不可解な演出で、わずかに女警備員との格闘が肉体の痛みを感じさせて気を引く程度。この後はゴローが国会の証人喚問で拉致現場の証拠写真を配ったり、左手が義手だったり、死んだはずのケイコが生きていたりと、まったく狐につままれたような展開。狙撃されたゴローが目をむいて怒りを表現するシーンがあるが、この映画に期待していた観客もあまりの不出来に目をむいているのではないだろうか。。。


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