こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レッドライン

otello2008-07-10

レッドライン REDLINE


ポイント ★*
DATE 08/6/2
THEATER TCC
監督 アンディ・チェン
ナンバー 132
出演 ナディア・ビョーリン/ネイサン・フィリップス/エディ・グリフィン/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


フェラーリランボルギーニ、ポルシェ、アストンマーチンメルセデス・・・。息を飲むようなスーパーカーに最高のチューンナップをほどこし、大金を賭けて公道でレースをする。究極のスピードが生むスリルにアドレナリンは沸騰し、限界まで踏み込まれたアクセルが直線を切り裂き、研ぎ澄まされたステアリングとギアワークがカーブを征服する。しかし、本物の自動車を走らせることにこだわったせいで臨場感に欠け、劇中のドライバーの持つテクニックがいまひとつ体感できなかった。


自動車工房のナターシャは超絶技巧を持つ女性ドライバー。ある日、違法な賭博レースに参加することになるが、負けた上に雇い主に裏切られてその身を売られてしまう。ナターシャはイラク帰りの元軍人カルロと共に、レースを主催する金持ち連中に復讐するために立ち上がる。


大音量のラップミュージックにグラマラスな美女をはべらせて酒を飲みながらレースを観賞する金持ち連中。そんな彼らの言いなりにクルマを操るドライバーたち。これらの人物像が類型的で奥行きがない。ナターシャの長い手足に日焼けした肌、真っ青な瞳というのも、バービー人形を見ているかのような現実感のなさが漂う。カルロもまた口数は少ないが腕っ節が強くどんな窮地にも動じないという正義漢。何のひねりもない人物描写はこの作品が対象としている観客層、つまり小難しいことは考えずに映画館でひと時世間の憂さを忘れたいと考える人びとにはうってつけだが、それ以外の魅力を映画に求める層には物足りないだろう。


結局、ナターシャは母親を人質に取られて無理やりレースにエントリーさせられ、ぶっちぎりで優勝という寸前に母親を救い出したというカルロからの連絡でレースを放棄する。何でもカネで言うことを聞かせようとする連中への強烈な意趣返しは爽快だったが、その後ナターシャとカルロが結ばれるというお約束どおりのエピローグ。もう少し何らかのひねりが欲しかった。


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