こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

雲南の花嫁

otello2008-07-28

雲南の花嫁


ポイント ★★
DATE 08/4/10
THEATER SG
監督 チアン・チアルイ
ナンバー 87
出演 チャン・チンチュー/イン・シャオティエン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


大きな目と太陽のような笑顔、そうかと思うと表情がめまぐるしく変わる。ちょっとお転婆だけどふくれ面さえもキュート、前向きで思い込んだら一直線、行動力と持ち前の明るさで自分や仲間の間に次々と起きる問題を解決し、いつも友人たちの中心にいる。そんな、身近にいるとちょっと引いてしまうような少女の物語は、チャン・チンチューのプロモーションフィルムのようで、NHK朝の連ドラ(東京制作)のヒロインみたいな屈託のなさ。はたしてエピソードも朝ドラのように突っ込みどころ満載だ。


赤ちゃんころに母を亡くしたフォンメイはまっすぐに育ち、幼なじみのアーロンと結婚式を挙げる。しかし、中国雲南省のイ族の習慣で、結婚後3年間は一緒になれない。アーロンのそばにいたいフォンメイは、アーロンがコーチを務める娘龍舞隊に入隊する。


赤を基調にカラフルに編み上げられた娘たちの民族衣装が美しい。さまざまな柄が織り込まれた鮮やかな彩りは、彼らの美意識の高さを感じさせる。また、男女を問わず感情を歌にして相手に聞かせ、喧嘩でさえ歌の出来で優劣が決まってしまうという平和な伝統。このフィルムに収められているイ族の風習はどこまで本当のものかは知らないが、実りの多い大地、歌と踊りが大好きな温和な人々、きれいな空気と緑濃い森林など、彼らの土地はまさに桃源郷と呼ぶにふさわしい。


急に走り出したり、断食したり、逆さにぶら下がったりと、フォンメイの行動はエネルギーを持て余しているよう。それは、大好きなアーロンとの仲を進展させられない苛立ちなのだが、一方でアーロンに押し倒されると彼を蹴り飛ばす。このあたりのフォンメイの複雑な乙女心はほとんど理解できない。その後、フォンメイの娘龍舞隊は一時活動中止になったり、メンバーが欠けたりもするが、結局北京で開かれる全国大会で優勝するという話の飛躍。話されている言葉がすべて普通話なのを見ると、単に北京の人間がイ族という少数民族を題材にした映画を撮りたかったいうだけと思えてくる。


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