こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

帰らない日々

otello2008-07-31

帰らない日々 RESERVATION ROAD

ポイント ★★★
DATE 08/6/26
THEATER シネマート
監督 テリー・ジョージ
ナンバー 153
出演 ホアキン・フェニックス/マーク・ラファロ/ジェニファー・コネリー/ミラ・ソルヴィノ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


加害者が感じる良心の呵責、被害者遺族が抱くやり場のない怒り。突然の交通事故が、普通の人びとのありふれた日常をまったく違う世界に変えてしまう。怯えながら暮らす加害者はあらゆることに敏感になり神経の休まる間がなく、憎悪に燃える被害者の父は誰を見ても犯人に思えて余裕をなくしてゆく。普段死や苦しみと無縁に暮らしていても、いつ当事者になるか分らない。双方がトスされたコイン表裏のように交互に顔を見せるという構成が、くすぶる感情を非常にリアルに再現し、どちら側の登場人物にも共感を覚えてしまう。


弁護士のドワイトは息子と野球観戦に行った帰り、少年をひき逃げする。少年の父親・イーサンは警察の捜査が進展しないことに業を煮やし、弁護士事務所に調査を依頼する。彼の担当にドワイトが指名される。


ボストン郊外の小さな街、住民は皆善良で知的水準の高い高所得者層。それだけに今の生活を失いたくない思いが強い。轢いてしまったことに気付きながらその場を立ち去ってしまったドワイトの小心さと、後悔しつつも自分の息子との幸せを壊したくないという身勝手な願望。一方で早く捕まえに来てくれという矛盾した気持ち。特にせっかく警察で真実を話そうとしても取り合ってもらえなかったときの落胆と安堵の混じった表情が絶妙だ。きちんと責任を取らなければ決して安寧は訪れないということを知っていても、なかなか勇気が湧かないという逡巡が手に取るように伝わってくる。


事件をいつまでも引きずるイーサンと区切りをつけようとする妻の間に一悶着起きるが、やがてイーサンはドワイトの仕業であることを突き止める。犯人に犯人探しを頼んでいたという皮肉を知ったイーサンは、ドワイトを拉致して銃で脅す。復讐を誓ったはずのイーサンは目的を果たすことをあきらめ、ドワイトは自首する。不幸と不運に押しつぶされそうになり、どれほど運命の歯車を狂わされようとも、イーサンは最後の一線に踏みとどまり、ドワイトは人の心を取り戻すところが救いだった。


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