こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダークナイト

otello2008-08-08

ダークナイト THE DARK KNIGHT

ポイント ★★*
DATE 08/8/2
THEATER THYK
監督 クリストファー・ノーラン
ナンバー 188
出演 クリスチャン・ベイル/ヒース・レジャー/アーロン・エッカート/マギー・ギレンホール
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


神出鬼没にして身元不明、超能力は持っていないが、警察の先を読みあらゆる警戒をすり抜けてビルやフェリー、人体にまで爆弾を仕掛ける。さらに要人を誘拐したり銀行からカネを盗んだりと、子分もほとんどいないのに人手がかかる大規模な悪事を事もなげに遂行する。そんなジョーカーの持つパラドックスがこの作品の魅力でもあり欠点でもある。カネには興味がなく、ただ悪の頂点に立ちたいという欲望は、結局のところ何を目指しているのだろうか。正義感ヅラしたバットマンや検事の鼻を明かしていく姿は痛快だが、動機が明示されないために狂人にしか見えなかった。


新任の地方検事・ハービーはギャングの資金源を断ち、バットマンの活躍で首謀者を逮捕する。ギャングたちはジョーカーを雇ってハービーとバットマン抹殺を謀り、さらに犯罪撲滅を目指す市長の命まで狙う。


ジョーカーの波状攻撃に警察もバットマンも後手後手に回るのだが、なぜジョーカーはそれほどの行動力と資金力を持っているのかは明かされない。ハービーと彼の恋人の拉致、大量の兵器の使用、建物の破壊など相当な準備と時間を要するのに簡単にやり遂げるのは、不思議を通り越して子供だましに思えてくる。そのあたりジョーカーの協力者をきちんと描いておけばもう少し物語に説得力が出たはずだ。


バットマンとジョーカーは正義と悪というコインの表裏のような関係だ。ジョーカーがいるからバットマンは市民に求められ、バットマンがいるおかげでジョーカーはギャングから信頼される。軍事大国が常に仮想敵国を求めるような相互補完。だからこそバットマンはジョーカーを殺さず、カラクリを知ったハービーは善悪半面の顔になる。正義が一番必要としているのは悪の存在。もしかしてジョーカーを陰で支援していたのはブルース・ウェインその人だったというオチならば拍手喝采、ジョーカーの謎もすべて明らかになるのだが。。。

↓その他の上映中作品はこちらから↓