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レス・ポールの伝説

otello2008-08-25

レス・ポールの伝説


ポイント ★★
DATE 08/7/8
THEATER ポニー・キャニオン
監督 ジョン・ポールソン
ナンバー 164
出演 レス・ポール/キース・リチャーズ/ジェフ・ベック/ポール・マッカートニー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


超絶的な演奏テクニックだけでなく、エレキギターの発明でギターの持つ可能性を無限大に引き出し新たなサウンドを生み出した上に、多重録音という技術を思いついたアイデアマン。90歳を過ぎた今もブロードウェイの舞台に立ち、軽妙な語りと懐かしい音楽で聴衆を魅了するミュージシャン。キース・リチャーズポール・マッカートニーにまで彼の存在なしでは現代音楽の隆盛はなかったと言わしめる、いまや生きる伝説となったレス・ポールの毀誉褒貶に満ちた人生を振り返る。


ウィスコンシン州の小さな街に生まれたレス・ポールは小さいころから音楽に夢中になる一方、好奇心が旺盛で機会いじりが好きだった。大恐慌の時代になると20年代の音楽が大流行、レスはシカゴに出てカントリーやヒルビリーをジャズ風にアレンジする。40年代になるとレスは絶頂期を迎えるが、やがてロックンロールに主役の座を奪われる。


最近の活動を納めたデジタル撮影の映像に古いモノクロフィルムや音を盛り込んで、レスの人生を振り返ろうという試みは意欲的だが、駆け足でおさらいしましたという「端折った感」が否めない。せめてエレキギターという革命的な楽器の出生時の苦労や工夫など、もう少し見せ場として用意して欲しかった。本人はそんな自慢話めいたことは嫌いなのかもしれないが、それならば周辺の人びとから取材をするべきだ。多重録音に関しては、妻のメリー・フォードとの仲むつまじい録音風景を公開するなど饒舌。今では当たり前のメカニズムでも当時は驚くような発想の転換だったことが伺える。


簡単な原理でも、他人が気付かないことを最初に実行に移し実用化した者が歴史に名を残す。レスのひらめきと工夫こそが20世紀の音楽産業を変えたということがよく理解できるのだが、音楽家と発明家の両方の実像を追ったために、掘り下げ方が甘くなってしまった。


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