こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

幸せの1ページ

otello2008-09-12

幸せの1ページ NIM'S ISLAND

ポイント ★★*
DATE 08/7/4
THEATER 角川
監督 ジェニファー・フラケット/マーク・レヴィン
ナンバー 160
出演 ジョディ・フォスター/アビゲイル・ブレスリン/ジェラルド・バトラー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


毎日が冒険のような少女と、空想の中でだけスリリングな日々を送る女性作家。大自然のめぐみや脅威といつも隣合わせ中での食料からエネルギーまで自給自足の生活と、大都会の一室ですべて電話とネットだけで済ましてしまう便利さのコントラストが鮮明だ。孤立した状況は同じなのに、少女の暮らしのほうが数段輝いて見える。いくらスーパーヒーローを頭の中で創作しても、実体験に基づかない大活躍は食事の支度や動物との交流といった少女の日常生活にははるかに及ばない。知識の砦の籠もるより、己の目で見て肌で感じたことこそが小説の血肉になるのだ。


南海の孤島に父親のジャックと2人で住むニム。ある日、ジャックは研究のためにボートで出かけて遭難する。アレックスは執筆中の小説のリサーチでジャックにメールを送るが、それを見たニムから返事が来る。ニムが孤立していることを知ったアレックスは彼女の島に向かう。


目じりのシワだけならともかく、口元の細かいシワや節くれだった指先は老婆のようなアレックス。対人恐怖症で外出もできず、自宅でこもりっきりで鏡も見ないという設定なのだろうが、ここまでリアリティを出す必要はあるまい。それともこれが、まだ45歳のジョディ・フォスターの素なのだろうか。読者に夢を売るアドベンチャー小説作家の役なのに、現実は想像とは遠いしょぼいオバサン。カッコいいヒーローを期待していたニムの失望が手に取るように分かったが、それ以前に彼女のあまりの老けぶり見せられて少なからずショックだった。子供向けのファンタジー映画なのだから、もう少しきれいなオバサンでもよかったはずだ。


快適な自宅から飛行機・ヘリコプター・救命ボートと乗り継いで、アレックスはやっとニムの島にたどり着く。その旅自体がかつて経験したこともないほどの困難の連続で、彼女は自分の小説に足りなかったものに気付く。ニム父子の生活ぶりがあまりにも「先進国の人間が憧れるエコライフ」というステレオタイプで鼻に付く分、アレックスの物語にテーマを絞ってもよかったのではないだろうか。。。


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