こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャカリキ!

otello2008-09-14

シャカリキ!

ポイント ★*
DATE 08/9/6
THEATER 109KH
監督 大野伸介
ナンバー 216
出演 遠藤雄弥/中村優一/鈴木裕樹/原田泰造
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


努力・友情・勝利という青春スポコンドラマの3要素をすべてそろえながらも、それらを大安売りしてしまっては物語は空回りする。廃部寸前の自転車部に新入部員が加入することで全体のモチベーションが上がり、一人ぼっちだった彼もまたチームワークを学んでいく設定も陳腐ならば、最後の試合で一致団結してライバルを倒す結末も予想通り。別に予定調和的な展開を否定するわけではないのだが、登場人物のキャラにリアリティがなさすぎるのが致命的な欠陥だ。また、自転車競技の奥深さに対する追及が甘く、時速70キロ以上で疾走するロードレーサーのスピード感も体感できなかった。


自転車好きのテルは通学用自転車で、練習中の自転車部員・鳩村を抜き去ったことから、亀高自転車部に入部する。上り坂に絶対の自信があるテルは試合で名門校のエース・由多に対抗心を燃やすあまり飛ばしすぎて失格、自転車部は廃部になる。


テルの「唯我独尊」的性格を強調するあまり極端な行為にばかり走らせる脚本は素人並みだ。超人的なパワーとスタミナを持っているのは理解できるが、ロードレーサーに乗れなかったり、先輩が懇切丁寧に団体戦のルールを説明しているのにそれを無視したり、自分のせいで負けたのに全く反省の色も見せない。ここまで頭の悪い人間を主人公にしていいものなのか。さらに上り坂を見つけるといちいち「坂や!」と叫ぶが、そんなもん口に出さずとも心の中で思っていればいい。純粋にアホなんだろう。


一度はあきらめた自転車の夢を取り戻すために、自転車部員全員で市民ロードレースを目指す。そこには由多もエントリーし、テルや鳩村にとってはリベンジのチャンス。由多は仲間のサポートを拒否するが、亀高は鳩村を勝たせるために他の部員をサポートに回す。当然我の強いテルはアシストを潔しとせず、鳩村にホイールを譲った自転車を担いで上りの山道を走りだす始末。もはや完全に荒唐無稽なギャグマンガの世界。まあ、チーム一丸となって鳩村を勝たせた達成感と、映画の作り手がシャカリキになっているのはよく伝わってくるが、もっと構成に緻密さがないと感動を押し売りする「24時間テレビ」と変わらない。


↓その他の上映中作品はこちらから↓