ああ、結婚生活 MARRIED LIFE
ポイント ★★★
DATE 08/6/20
THEATER KT
監督 アイラ・サックス
ナンバー 147
出演 クリス・クーパー/ピアース・ブロスナン/パトリシア・クラークソン/レイチェル・マクアダムス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
自分は妻から愛されていると信じている夫と、夫は自分ナシでは生きていけないと思い込んでいる妻。なのにふたりとも愛人を作って、お互いに知られぬままに別の人生を楽しんでいる。夜はいつもベッドを共にする夫婦なのに、相手の本心をまったくわかっていないという皮肉。さらに夫の友人が思わぬ騒動を引き起こす。本来ならばコメディにするような題材を、ヒッチコック調のミステリータッチにしてしまうというひねりが効いている。
ハリーはケイという若い未亡人と付き合っているが、長年連れ添った妻・パットとの離婚に踏み切れない。一方、親友のリチャードはケイに魅かれ始める。さらに、リチャードがハリーの別荘を訪ねると、パットが男を連れ込んでいた。
ハリーに不倫を打ち明けられ、パットの浮気にも遭遇するリチャードは、双方の秘密を知った上でケイを我が物にしようと画策、「他人の不幸の上に幸せを築いても、良心が痛むだけだ」と言って彼女を口説く。別れたらパットは生きていけなくなると、ハリーはパットを殺す計画を立てる。誰もが身勝手な理論で動きながら、巧みに表の顔を取りつくろっているという危うさと滑稽さ。綱渡りのような緊張感さが全編を覆っている。
所詮、愛に満ちた結婚生活などというのは幻想に過ぎない。それでも、ハリーとパットの間に起きた事をすべて知っているリチャードはケイと結婚する。人間というのはなんという懲りない存在なのか。過去や他人の出来事を教訓とせず同じ過ちを繰り返す。映画は、そんな男と女の愚かさを半分冷笑しながらも温かく見守るというスタンス。ハリーもパットも最後には配偶者の胸のうちに気付いていて、裏切ったリチャードに対しても恨みがましい気持ちを持っているはず。大人の世界では他人とうまくやっていくには建前が必要であり、知っていても知らないフリをし、知らなくても知っているフリをする。よりを戻したハリー夫妻の姿が、結婚生活が長続きする秘訣を物語っている。