こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フレフレ少女

otello2008-10-18

フレフレ少女

ポイント ★★*
DATE 08/10/13
THEATER THYK
監督 渡辺謙作
ナンバー 249
出演 新垣結衣/永山絢斗/柄本時生/斎藤嘉樹
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


文系メガネ女子がふとしたきっかけで硬派に転向し、鍛錬と根性の世界で達成感を手に入れる。手垢のついたプロットながら、指先までピンと伸びた応援団の所作の美しさがそれを補って余りある。特に学ランに身を包んだ新垣結衣のりりしくも毅然とした勇姿はこの作品の命だ。練習や試合シーンでの見事にキマった応援指導が、非常にぬる〜い展開のストーリーを要所で引き締めている。


野球部のエースに一目ぼれした桃子は、彼を応援するために応援団に入る。しかし団員は山本1人で廃部寸前、さっそく桃子と山本は団員募集に奔走するが、入団したのは訳アリの1年3人だけ。そんな中、桃子は団長を任される。


桃子が勧誘するときの妙なセリフが笑える。恋愛小説の一節を引き合いに出し、まったく見当違いなことを言っているのにもかかわらず不思議な説得力を持ち、いつしか男子生徒を入団させている。人をひきつける魅力やまとめる指導力は彼女の秘められた能力で、その使命に目覚めていく過程が精神的な成長に重なって楽しめる。他人に「ガンバレ」というのなら、それ以上に自分たちが頑張らなければならない。応援団の
「熱意と気合」こそが勝利を呼び込むという、いまどき珍しい精神主義を標榜するが、そうした「時代遅れ」を堂々と前面に出すところがかえって新鮮だ。さらにライバル校の応援団は漫画に出てくるような古典的応援団。彼らの存在が桃子たちを際立たせ、努力を惜しまない姿勢を桃子にとらせる。


応援の甲斐あって野球部は県予選決勝まで勝ち進むが、相手投手の投球術に歯が立たない。そして最終回、他の生徒・OBも一体となった応援の力で野球部に奇跡を起こさせ、ライバル校の応援団にも情熱を認めさせる。このあたりは青春モノの王道を行くが、最後に桃子は学ランを脱いでセーラー服の女の子に戻る。応援団にいた彼女の2年間はいったい何だったのだろうと思わせるラスト。過去をあっさり捨てる女のメンタリティがクリアに描かれていて、さわやかだった。


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