こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レッドクリフ

otello2008-10-30

レッドクリフ 赤壁

ポイント ★★★
DATE 08/8/26
THEATER 東宝東和
監督 ジョン・ウー
ナンバー 206
出演 トニー・レオン/金城武/チャン・フォンイー/チャン・チェン/ヴィッキー・チャオ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


英雄豪傑が割拠する「三国志」の世界、義に篤く知略に富む男たちは数で圧倒する敵に敢然と立ち向かう。一騎当千のつわものは剣や槍を自在に使いこなし、重装歩兵は洗練された集団戦法で敵を殲滅する。ジョン・ウー監督は縦横無尽のカメラワークとダイナミックな音楽で中国史上最大の決戦を再現する。しかし、この壮大な叙事詩とも言える名作をコンパクトにまとめるのは不可能、いよいよこれからというクライマックスの合戦が“to be continued”というのには肩透かしを食った。


曹操軍に追われ敗走中の劉備諸葛孔明孫権の元に送り、蜀と呉の同盟を申し出る。呉の周瑜孔明はお互いに才能を認め合い、蜀呉連合軍を結成、80万の大軍で迫り来る曹操の水軍を赤壁で迎え撃つ。


まずは陸戦と先遣隊を送り込んだ曹操に対し、連合軍は歩兵が盾で迷路のような壁を作り、曹操軍の騎兵を誘いこんで包囲してしまう。その際、盾のすき間から柄の長い鎌のような武器で敵歩兵の下半身を攻撃する。脚を切られた兵は動けなくなり、止めを刺される。こんな武器や戦い方があるとははじめて知った。関羽張飛といった伝説の武人も単身数十人の敵を相手にするなど八面六臂の大活躍。それらのシーンは、まるで戦場にいるかのような臨場感が最後まで途切れない。


ただ、主要登場人物だけでも10人近くに及び、総花的に見せ場は作っているものの、それぞれのキャラクターが分るようなエピソードに乏しい。これほど有名な物語なのだから、観客は大筋を知っていて当然ということなのだろう。結局、漢の帝位を乗っ取ろうとする悪役の曹操がいちばん分りやすく、部下の心を掌握しきれず苦悩する孫権もまた、二枚目の君子然とした孔明周瑜よりよほど魅力的。これまで何度も芝居や映像にされてきた古典に新たな命を吹き込むのならば、人海戦術を使うだけではなく、大胆な解釈で新しい人物像を作りあげてもよかったはずだ。この前編は周瑜が魏の艦隊の模型に火を放つところで終わるが、続編ではどれほど大掛かりなスペクタクルを見せてくれるのか期待したい。


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