こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Happyダーツ

otello2008-11-07

Happyダーツ

ポイント ★★*
DATE 08/9/11
THEATER SG
監督 松梨智子
ナンバー 221
出演 辺見えみり/佐藤仁美/加藤和樹/新田恵利
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


イケメン男子に声をかけられた三十路OLが、一目ぼれの心を象徴するのにハートマークを全開で飛ばすという、今では少女マンガでも見られないようなベタさ加減にドン引きする。さらに同じような大げさな視覚効果や耳障りな音楽を繰り返す上に、辺見えみりの分りやすい演技や尾行シーンの子供向け探偵ドラマのような扮装などを臆面もなく確信犯で繰り返すことで、ヒロインが置かれている境遇がいかに軽薄なものかを表現する。毎日は楽しい、でも生きている実感に乏しい、そんなイマドキの独身ひとり暮らし女性の気持ちの裏返しをあえてコテコテに描くことで強調する。


派遣OLの美奈子は恋に遊びに忙しいが、何の目標もなくすごしている。ある日、友人と共にダーツバーに行くと、篠塚という声をかけられる。美奈子は篠塚を好きになるが篠塚はダーツのプロを目指して修行中、美奈子は篠塚の気を引くために新しいダーツを買う。


最初は篠塚目当てで始めたダーツに、いつしか美奈子はハマる。恋も仕事も受身で何一つ熱くなれなかった彼女が初めて打ち込めるものができたことで、周りの環境まで違って見えてくる。しかもダーツは真剣に取組んでいる人が少ないためちょっと真面目に練習すればそこそこ勝てるようになったのも、のめりこんだ理由だろう。だが、わずか2ヶ月ほど特訓しただけで日本のトップクラスになれるほど、この競技は甘いものなのだろうか。そのあたりは疑問に残る。


腕を上げた美奈子は道場破りの旅に出た後、全日本選手権にエントリー、順調に勝ち上がる。そこでも大時代的なBGMをバックにハイヒールのデブと対戦するなど、あくまでギャグマンガ的なスタイルを崩さない。それでも物語の進行と共に美奈子のダーツの投げ方が様になっていく過程とシンクロするように、映画も地に足が着いたようなしっかりとした構図になっていく。このあたり非常によく計算された構成で、成長した美奈子の姿が後味よかった。


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