こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

彼が二度愛したS

otello2008-11-12

彼が二度愛したS DECEPTION

ポイント ★★*
DATE 08/7/25
THEATER スペース汐留
監督 マーセル・ランゲネッガー
ナンバー 180
出演 ヒュー・ジャックマン/ユアン・マクレガー/ミシェル・ウィリアムズ/マギー・Q
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


深夜までひとり残業している時に、ふと感じるエアポケットのような時間。自分が何者でなんのために生きているのかという疑問がとめどなく湧いてくる。大都会ゆえの人間関係の希薄さにどっぷりと浸かった主人公が胸にたまった澱を打ち明ける職業柄の孤独が非常にリアルだ。映画は一人の男と二人の男女の出会いを通じて、ノワールな雰囲気を漂わせたスタイリッシュな映像で現代人の心の病巣を鋭くえぐりだす。それは罠なのか愛なのか、暴走する感情と手玉に取られる悔しさが悪循環を呼び、運命を狂わせていく。


真面目な会計士・ジョナサンはワイアットという弁護士に話しかけられ意気投合、付き合いを深めていく。ある日、お互いのケータイを取り違えたことからワイアットが所属する秘密セックスクラブにジョナサンは参加する。そこで、地下鉄のホームで見かけて一目ぼれした女・Sと再会する。


性経験がほとんどないジョナサンが次々と女性と逢瀬を重ね、目覚めていく。互いに素性は知らせす一夜をともにするだけ。成功した女性ほど相手に恵まれず性欲をもてあましているという現実が、こんなサークルを生んだのだろう。そして男も女も恋愛感情を抜きにして激しく燃え上がる。いかにもニューヨークらしいビジネスライクなドライさがクールな夜景とマッチしている。


ワイアットの正体は詐欺師で、ジョナサンを利用して会社の裏金を盗もうとするが、その過程でジョナサンのSに対する気持ちを利用する。ただ、女に不自由しなくなったジョナサンがSに夢中になるというのは考えづらいし、その後もワイアット名義のパスポートを簡単に偽造できるものだろうか。さらに、カネを手に入れたワイアットが白昼の公園でジョナサンを殺そうとする場面に、Sがタイミングよくあらわれてワイアットを射殺するというご都合主義。しかもジョナサンはせっかく手に入れた大金を捨てる。設定の飛躍と終盤の詰めの甘さがこの作品のもつ緊張感に穴をあけていた。


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