こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

櫻の園

otello2008-11-14

櫻の園

ポイント ★★
DATE 08/11/10
THEATER WMKH
監督 中原俊
ナンバー 275
出演 福田沙紀/寺島咲/杏/はねゆり/大島優子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


礼儀正しく先生の言うことは絶対服従。純粋培養された育ちのよい女子ばかりが集う良妻賢母養成所のような女子高にやってきた転校生。息苦しさを感じながらもなんとか在籍した痕跡を残したいと思っている。そんなヒロインが偶然手に入れた「禁断の戯曲」の上演をめぐって伝統を大切にする学校側と対立、その過程でおとなしかった彼女の同調者たちは初めて「自分たちで考えて自分たちで決める」ことを覚えていく。ところが、クリアしなければならない障害が余りにも低く、先生たちも物分りがよくて拍子抜け。もっと彼女たちが芝居に情熱的に打ち込み、達成感を得られる構成にしてもよかったのではないか。


バイオリニスとの夢をあきらめた桃は由緒ある櫻華学園に転校する。自我の確立した桃は早速クラスから浮くが、開かずの教室から「桜の園」の台本を発見し、生徒たちだけで公演しようと計画する。しかし、「桜の園」は教頭先生によって固く禁じられる。


コンクールで演奏法を決して曲げず指導教官と決別するほど自己主張が強かった桃が、保守的で自立心の低い生徒が大勢を占める学校に新風を送り込み、生徒たちも彼女に触発されて新しい己の可能性を発見していくという物語にする予定だったはず。だが肝心の桃が教頭先生に反対されると急にやる気をなくす始末。かろうじておとなしい優等生・赤星の進言で気を取り直すが、バイオリン教官に見せた鼻っ柱はどこへ行ったのか。


結局、担任の協力のもと教頭先生も折れて、創立記念日での上演が認められる。そこでも生徒たちが団結して熱い思いをぶつけるのでもなく、学校に対して過激な行動をとるわけでもない。先生による特訓も特別ユニークなものでもない。このぬるい展開はリアルといえばリアルだが、劇映画として作っている以上、何らかの劇的な演出をすべきだろう。赤星がボーイッシュな小笠原とお互いに対する思いとコンプレックスを打ち明けあうシーン以外は感情的な盛り上がりにも乏しく、最後まで平板な印象しか残さなかった。


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