こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラブファイト

otello2008-11-16

ラブファイト

ポイント ★★*
DATE 08/11/15
THEATER THYK
監督 成島出
ナンバー 279
出演 林遣都/北乃きい/大沢たかお/桜井幸子
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


幼なじみの少年に保護者の如く付きまとい、彼にもたらされる災いをことごとく取り除く女子。まっすぐに伸びた脚から繰り出されるハイキックはきれいな弧を描き、パンチは鳩尾を正確に突く。不良を倒した後に見せるキュートな笑顔が輝くようにまぶしい。一方の少年がボクシングに打ち込む姿はリアリティに富み、肉体的な鍛錬の成果がうかがわれる。また、うらぶれたジムの雰囲気が疲れた中年男の心境にシンクロし、エディ・タウンゼントのポスターが彼らを見守っているよう。映画は若いふたりの恋に中年男女の愛を織り交ぜることで人生の深い味わいを出そうとしているが、それが逆にテーマを曖昧なものにしてしまった。


いじめられっ子の稔は子供のころからいつも同級生の亜紀に助けられてきたが、それを鬱陶しく感じていた。そして亜紀に勝つためにボクシングジムに入門する。そのジム会長の大木は過去に大きな失恋を経験し、生きる意欲を失いかけていた。


喧嘩がめちゃめちゃ強い亜紀が稔を守ろうとするのは、彼が好きだからなのだが、なかなか本心に気付かない。本当は稔が強くなって自分を守ってくれるときが来るのを待っている。稔のほうはボクシングの才能があるのに相手を本気で殴れないヘタレ。お互いがお互いを気にしながらも、どこかで気持ちがすれ違ってしまうもどかしさ。そのあたりのふたりの会話のやり取りが非常にテンポよくて楽しめる。


大木もまた、かつては脚光を浴びたボクサーだったのに、落ち目女優の元恋人を救い出すことができずもがいている。稔も大木も自分の情けなさを臆面もなく口にするが、それが大阪弁であることで濃厚な人情味を醸し出している。正直に弱さやつらさをさらけ出すことでカッコつけずに頑張れる、一方で女心には鈍感、そんな稔と大木の不器用さにしみじみと伝わるのだ。ただ、中盤から稔vs亜紀という構図が崩れて、大木と女優のエピソードに軸足が移ってしまうために物語の焦点がブレてしまった。それぞれのエピソードや台詞はとても印象に残る上
、映像はシャープでスピード感があっただけに、もう少し展開を整理してほしかった。


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