こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バンク・ジョブ

otello2008-11-21

バンク・ジョブ THE BANK JOB

ポイント ★★★
DATE 08/9/22
THEATER 映画美学校
監督 ロジャー・ドナルドソン
ナンバー 231
出演 ジェイソン・ステイサム/サフロン・バロウズ/スティーブン・キャンベル・ムーア/ダニエル・メイズ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


どうやって盗むかよりも、盗んだ後にどうやって逃げ切るか。盗まれたものの価値が大きければ大きいほど追っ手は厳しく、殺人すらいとわない。そんな相手と取引をし、罠を仕掛け、安全を確保する。自分の切り札をどれだけ有効にいかし、どこまで強気に出られるか。そしてタイミングと行動力が勝負の分かれ目。窃盗団、ギャング、政府機関、汚職警官、映画は追い詰められて身の破滅におびえた男たちが焦燥する様子をリアルに描き、非常に泥臭い感情を再現する。カネや宝石を取られるよりも地位を失うことを恐れる政府高官の姿が哀しい笑いを誘う。


中古車販売業のラリーのもとに、マルティーヌという女が警報が解除された銀行の地下金庫のネタをもたらす。ラリーは仲間を集めてトンネルを掘り金庫破りを決行、しかしそれは王室スキャンダル写真を盗み出すためにMI5が裏で糸を引いていた。


ラリーらが手に入れたのは王室だけでなく政府高官も含めた「恥ずかしい写真」とギャングが警官に贈ったわいろの帳簿。金庫破り自体は成功したのにさまざまな人間の命取りとなる証拠という副産物のために、ラリーの仲間は一人また一人と消されていく。ギャングに対しては人質の返還、MI5に対してはパスポートと身分の保障、警察には汚職警官の告発と一人で3者を敵に回すすラリー。虚々実々の駆け引きが緊迫感を持ってスクリーンから迫ってくる。


ただ、登場人物が多岐にわたるために人間関係が整理しきれず、本筋とはあまり関わりのない省略できそうなエピソードも多い。たとえば盗撮写真の由来などMI5内のセリフだけで十分だし、マイケルXのもとに潜入したスパイの話など必要なかったはず。娼館の女主人の証言なども物語のスピードを奪っているだけだ。リサーチした事実に基づいて様々な情報を盛り込もうとする意欲は理解できるが、もっと焦点を絞り込みテンポを大切にしてほしかった。


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