こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デス・レース

otello2008-11-30

デス・レース DEATH RACE

ポイント ★★*
DATE 08/9/24
THEATER 東宝東和
監督 ポール・W・S・アンダーソン
ナンバー 233
出演 ジェイソン・ステイサム/タイリース・ギブソン/イアン・マクシェーン/ジョーン・アレン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


エンジンをチューンアップしたうえに分厚い装甲をほどこし機関銃を搭載した、まるで軍隊が戦場で使うために用意したようなレースカー。命知らずの囚人たちが、レースというよりも壮絶な撃ち合いを演じる。それは早くゴールするよりも、競争相手を撃破するのが目的だ。映画は彩度を落とした無機質な映像で、レースに参加する男たちの殺伐とした心理を見事にかもし出す。ただ、銃弾をぶっ放すことに主眼を置きすぎたために運転の超絶テクニックやスピード感あふれるスリルを味わえなかったのが残念だ。特にトレーラー型装甲車の圧倒的な火力でレースカーを粉砕していく様子は、迫力はあるがやや大味だ。


妻殺しの濡れ衣を着せられて刑務所に送られたジェンセンは、刑務所長が主催するデス・レースという殺し合いを兼ねたオートレースのドライバーにスカウトされる。その裏にはレースでカネ儲けを目論む所長の陰謀が隠されていた。


経済が崩壊し刑務所が民営化された近未来、TV中継の視聴収入で刑務所の利益を上げるためにレースがおこなわれている。視聴者はさらなる刺激を求め、エスカレートするほど視聴率が上がる。そんな恐るべき世界を舞台にしているが、失業中の労働者と刑務所長という、負け組みと勝ち組の対比が鮮やかだ。いつも景気悪化で被害をこうむるのは労働者階級、彼らの鬱憤をレースで晴らそうとするのだが、その気持ちすら利用して自らの保身に結び付けようとする強欲さが怖ろしい。


優位な立場にありながらいつしか恐怖と焦りを覚えていく刑務所長に扮するジョーン・アレンの演技の質が、最高の暗殺者に追い詰められていくCIA管理官を演じた「ジェイソン・ボーン」シリーズとまったく同じなのには笑ってしまう。話し方から立ち居振る舞い、強気の中に弱気を隠している表情など、デジャヴを覚えるほど。結局、彼女の企みがすべてジェンセンの知るところなって天誅をうけ、ジェンセンらは脱獄に成功するが、このあたりももう少しひねったアイデアが欲しかった。


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