こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エグザイル/絆

otello2008-12-13

エグザイル/絆


ポイント ★★★*
DATE 08/12/11
THEATER シネマスクエアとうきゅう
監督 ジョニー・トー
ナンバー 300
出演 アンソニー・ウォン/フランシス・ン/ニック・チョン/ジョシー・ホー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


舞うように銃を放ち、血しぶきを出しながら身悶える。スローモーションで撮影された銃撃戦は空間のあらゆる位置にカメラを配し、人物を立体的にとらえ、血なまぐさいシーンを優雅な映像に変換する。友のためにはわが身を危険にさらすことも厭わず、利害だけで結ばれた親分でさえ裏切る。そんな、固い友情で結ばれ、愚直なまでに仲間を守ろうとする男たち。映画は追い詰められた彼らの逃避と復讐を壮大なオペラのように叙情たっぷりに描く。暗い陰に覆われた登場人物の横顔が、苦悩と勇気、そして命を賭けるべき大切なものは何かを教えてくれる。


フェイというボスを狙撃したウーを守るためにタンとキャットがやってくる。そこに現れたのはブレイズとファット。激しい撃ち合いの後5人は旧交を温め、ウーを逃がす算段をする。途中、フェイと敵対するキョンの暗殺を請け負う。


プロローグで、タン、ブレイズ、ウーの3人が銃弾の数をそろえてから引き金を引くというフェアな戦いをするあたりからぞくぞくするような期待感が湧き上がる。しかも、この男たちの関係を一切説明せず、古い写真だけですべてを語らせるというクールさ。相手の技量を知り、銃弾で会話する。それはどんな言葉よりも饒舌な気持ちのやり取り。おそらく彼らは長い時間会っていなかったはず。それでも6発の銃弾だけでかつての信頼を取り戻すという大胆な省略が、あらゆる想像力をかきたてる。


キョン暗殺に失敗した5人は負傷したウーを引きずりながら、キョンとフェイ一味に追われる。その過程でも壮絶な銃撃戦が繰り返される。狭い住宅地、開けた荒野、さらに広々としたホテルのロビー。それぞれにカメラの動かし方や人物の描写を変えて、自在な映画的表現を見せるあたりはジョニー・トーの真骨頂。最後には黄金の夢を見ながら全員力尽きるが、そのときに証明写真機からはきだされた写真の笑顔のまぶしいこと。若いときに誓った永遠の友情どおり、気を許した友と一緒に死ねる幸福をかみしめているようなすがすがしさに満ちていた。


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