こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

悪夢探偵2

otello2008-12-19

悪夢探偵2

ポイント ★★
DATE 08/10/10
THEATER KT
監督 塚本晋也
ナンバー 246
出演 松田龍平/三浦由衣/韓英恵/松嶋初音
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


せっかく人の心を読めるのに、うまく使いこなす術を知らずにかえってパニックに陥ってしまう女。周りの人間の悪意にばかり敏感になって、いつしか被害妄想が制御できないくらいに膨らんで、自分を取り巻く世界すべてに恐れを抱くのだ。そんな彼女を母に持った青年は、さらに夢に侵入する能力を身につけている。映画は、他人の悪夢に入り込んで原因を排除できるが、己の悪夢には苦しめ続けられるというジレンマを持った主人公が、幻覚と悪夢の中でさまよった後に救済をもたらす。しかし、その過程で同じようなシーンが何度も繰り返されてうんざり。もう少し表現法を変えてアクセントをつけるべきだろう。


何もかも「怖い怖い」と言った挙句自殺した母親の夢にいつもうなされている京一は、雪絵というという女高生から悪夢を取り除いてくれと依頼を受ける。雪絵は同級生の菊川をいじめて以来不眠に悩んでいたが、一緒に菊川をいじめた友人たちが不審死を遂げていく。


幼いころの京一は、精神のバランスを崩して壊れていった母親を恐れていたのか、バス事故の幽霊を恐れていたのか、その脅えの根源があいまいで、なぜ彼が大きくなるまでおねしょをしていたのかよくわからない。雪絵が菊川に復讐されているのも単なる幻覚なのか覚醒しているときの事実なのか境目がぼやけている。結局、どこまでが現実でどこからが登場人物の脳内現象なのかがはっきりせず、あえて夢と妄想を混同させてB級ホラーのテイストを加えているために、視点を置き場所がよくわからない。故意に揺れて焦点の定まらないカメラがその感覚を増幅し、ひどい乗り物酔いになった気分になる。


やがて京一は菊川に母の面影を見出し、雪絵の夢に出てくる菊川の苦悩をやわらげることで、まだ正常だったころの母親がハンバーグを作ってくれた情景を思い出す。このあたりになるとほとんど物語は抽象的になりまったく脈絡のないホラー描写の連続。さんざん観客を怖がらせておいて「実は愛の記憶の映画なのだ」というオチをつけたいのだろうが、不快感ばかり先に立ち退屈を禁じえなかった。


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