こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

永遠のこどもたち

otello2008-12-28

永遠のこどもたち EL ORFANATO

ポイント ★★★
DATE 08/12/26
THEATER HTC澁谷
監督 J・A・バヨナ
ナンバー 314
出演 ベレン・ルエダ/フェルナンド・カヨ/ロジェール・プリンセプ/ジェラルディン・チャップリン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


この世に未練を残した霊はたくさんいるのに、それに気づく者はほとんどいない。届けたい思いがあるのに言葉にできず、ただ気配で知らせるだけ。先入観のない幼い息子は彼らを自然に受け入れることができるが、信じない母親にとっては恐怖でしかない。映画は死病のせいで霊感を得た子供とその母親の葛藤を通じて、死者の世界をのぞき見ようとする。そこには、死んだ者が生きているうちにできなかったことに対する後悔と、生きている者が死者にしてやれなかったことの後悔が入り交じる。それは恨みや怒りなどではなく、愛しているという気持ちを伝えることなのだ。


ラウラはかつて自分が育てられた孤児院を買い取り、障害児向け施設を開設しようとする。息子のシモンは遊び相手がいない寂しさからか、空想の中で友人を作って遊んでいる。ある日、シモンが海岸の洞窟で知り合ったという架空の子供を家に招待したことから不思議なことが起き始め、開設パーティの日にシモンは失踪する。


子供の霊はシモンには見えるのに大人には見えない。シモンと子供の霊たちはまるで生死の垣根を越えているかのよう。おぞましい復讐の犠牲になったというのに、子供たちは遺恨を残しているわけではなく無邪気に遊んでいる。シモンも新しいお友達のひとりというくらいの認識で、決して彼をあちら側に引き込もうとしているわけではない。そのあたり、霊に悪意がないことは明白なのだが、シモンを心配するあまりラウラが悪いほうにばかり考えていく。母親として当然の感情の昂ぶりがテンションを高めて
いく。

前半はミステリアスなホラータッチ、事件の真相が明らかになっていく過程はサスペンス、そして愛に満ちた穏やかなクライマックスと、物語は人間の死や霊に対する恐怖心を少しずつ取り除いていく。人が霊の存在を感じたとき、それはその霊が感謝の心を伝えたがっていることを示すラストシーンは、愛する者に先立たれたすべての人の慰めになるだろう。


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