こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミラーズ 

otello2008-12-29

ミラーズ MIRRORS

ポイント ★★
DATE 08/12/26
THEATER 109GM
監督 アレクサンドル・アジャ
ナンバー 315
出演 キーファー・サザーランド/ポーラ・パットン/エイミー・スマート
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


あらゆるものを左右逆に映す鏡はパラレルワールドへの入り口なのか。普段は閉じられた扉が邪悪な意思によって開かれたとき、現実世界が歪められていく。炎に焼かれた犠牲者の無念が鮮明な記憶となって鏡に残されている廃墟となった火事現場で、主人公の感覚が鏡の中の異界からコントロールされていくさまは人間の心のもろさを象徴しているよう。ただ、鏡像が実像と違う動きをするなど非常に不気味で鏡の持つ魔力がよく描かれているだけに、B級ホラーの定番のような思わせぶりな演出が過剰でおどろおどろしい効果音も耳障りだ。


火事で廃墟となったデパートの警備員・ベンは焼け跡に残った鏡に焼けただれた女の姿を見つける。その後も異変が続き、ベンは調査を進めると、そのデパートはかつて精神病院だった。そんなとき、家族の身辺にも異変が起き始める。


鏡像の動き通りのことをしてしまうシーンは衝撃的。特にベンの妹が自分の口を上下に引き裂いて死ぬシーンは目を覆うような凄惨さとともにその痛みがリアルに伝わってくるよう。また、ベンの息子が鏡の前から立ち去っても鏡像は座ったままで母親を見つめている場面は邪悪の存在を実感させるほどぞっとさせられる。このあたりの表現が恐怖をストレートに伝えていた。


やがてベンは、アンナという少女に憑りついた悪魔が鏡に閉じ込められ、その悪魔がアンナの身柄を要求していることを知る。しかし、悪魔が鏡像の世界を自由に移動できるなら何も精神病院のあった場所にこだわる必要はなく、ベンの家や別れた妻子の家にまで押し掛けられる能力があるならもっと早くアンナを見つけられたはず。結局、悪魔はアンナの体に戻るが、アンナとともにベンに退治されてしまう。そこは、悪魔がなぜアンナの肉体を強烈に欲するのか、彼らの結びつきの秘密を描いてほしかった。こちら側の人間に災厄をもたらすだけなら、鏡の中にいたほうがずっとやりやすいのだから。。。


↓その他の上映中作品はこちらから↓