こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

40歳問題

otello2009-01-10

40歳問題


ポイント ★★*
DATE 08/11/21
THEATER TCC
監督 中江裕司
ナンバー 284
出演 浜崎貴司/大沢伸一/桜井秀俊/スネオヘアー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


夢を追うには歳を取りすぎているが、諦観するにはまだ早い。一応の地位を築いていて人生に満足しているが、何か物足りなさも覚えている。これまでの自分をぶっ壊すようなことにチャレンジしたいと思っているが、先延ばしにしたままだ。40代を迎えたものなら大抵がふと心に浮かぶであろう「オレって何」的な感慨は、かつてバンドブームの中で音楽界をリードしてきた中年ミュージシャンの中にも確実に芽生えている。映画は3人の40代ミュージシャンのコラボレーションを通じて、経済的な安定と肉体的な衰えは感性をどれだけ鈍化させているかの調査をしているようだ。


FLYING KIDS浜崎貴司、音楽プロデューサーの大沢伸一真心ブラザーズ桜井秀俊の3人がスタジオに集められ、40歳をテーマにした歌を作るという課題を与えられる。音楽性の違いから曲作りは難航、時に大沢が切れそうになるのを桜井がなだめすかし、なんとか完成に向かう。


結構偏差値の高い大学を出ている浜崎と桜井は、就活をしていたくらいだから、音楽はあくまで趣味の延長のような余裕がある。大沢の「音楽こそ天職」という思い込みが2人との温度差を生み、時に意味不明の注文まで付け出す。家庭にカメラを招きいれ妻子を紹介する桜井は「生活のために音楽をやっています」感がにじみ出ていて、逆に音楽をやめても食っていけそうな雰囲気さえうかがえる。それが桜井の音楽に人間味を持たせているのに対し、大沢の音楽はあくまで尖鋭的だ。そのあたり、とんがった40代と丸くなった40代、そしてその中間の40代というポジションの取り方が絶妙だ。


出来上がった曲は「LOST CONTROL」と名付けられ、飼いならされた日常からの解放を叫んでいるかのよう。聞きにきた観客は歌詞に共感を持ちながらも行動に移す勇気はない。結局、40代は既成の自分をぶち壊して生まれ変わるには若すぎるということだろう。両親が死に、子供が独立し、背負うべき荷物が少なくなったとき、初めて今の40代もブレイクできる。それまで体力を温存しセンスを磨いておく必要を強く感じさせる作品だった。


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