こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デメキング

otello2009-02-17

デメキング

ポイント ★★*
DATE 09/2/13
THEATER TCC
監督 寺内康太郎
ナンバー 38
出演 なだぎ武/本上まなみ/ガッツ石松/山本浩司
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


スポーツも勉強もイマイチの少年は、ただその日その日を暇つぶしのようにだらだらと過ごしている。そして、そのような生活がこの先ずっと続いていくのではという不安も覚え、悶々とした日々を根底から覆してくれる物がやってこないかと期待している。瀬戸内の田舎町を舞台に、いまだ将来の展望もなく進路も定まらない冴えない主人公の心情がリアルだ。事件などめったに起きない、そんな中、年長の友人にもらった冒険のヒントを読み解くうちに、好奇心忘れずに行動を起こすことの大切さを説く。その上で人生はそれほど甘くないときちんと諭しているところに好感が持てる。


中学生の亀岡は小学生とつるんで探検団を結成、ある日忍び込んだ船で蜂屋という青年に出会い仲良くなる。しかし、蜂屋は突然亀岡宛に怪物・デメキングへの地図を残して東京に去ってしまい、亀岡たちはデメキングを探して灯台に向かう。


亀岡にとって蜂屋は非日常を感じさせてくれる存在。小さな街のしょぼい世界ではなく、何かもっと大きなものへ導いてくれる指標だったのだろう。一方の蜂屋も故郷で一生を終えるより東京に出て自分の中にある何かを変えようとしている。デメキングとは、そんな彼らの内に潜む変化への熱望。変わりたくてもなかなか変われない臆病な気持ちを徹底的に破壊してほしいという心の声なのだ。口先だけでなかなか体が動かず、ずるずると引きずられるように暮らす姿が共感を呼ぶ。


東京に出た蜂屋は、結局はやりたいことに出会わずうだつのあがらないまま。小説家になろうと決心した亀岡も、原稿用紙の前に座っても一向に筆は進まない。目標を見つけても、そう簡単には叶わないという厳しい現実が待ち受けている。挙句に、また相変わらず退屈な毎日を繰り返す。だからこそいつまでも胸の中にデメキングを飼い、夢の中だけでもやり直す機会が来ることを願っている。平凡な小市民にしかなれない運命を背負った若者の苦悩が非常に鮮明に描かれていた。


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