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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ストリートファイター/ザ・レジェンド・オブ・チュンリー

otello2009-03-07

ストリートファイター/ザ・レジェンド・オブ・チュンリー


ポイント ★★*
DATE 09/3/2
THEATER ITK
監督 アンジェイ・バートコウィアク
ナンバー 51
出演 クリスティン・クルック/マイケル・クラーク・ダンカン/ニール・マクドノー/タブー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


美しくてタフなヒロインが格闘技の腕を頼りに巨大な組織に挑んでいく。しなやかに伸びた手足から繰り出される拳や脚、軽々と宙を舞い相手を翻弄する身のこなし、そして骨の軋みまで聞こえる関節技。格闘ゲームの実写化するにあたってストーリーよりもアクションを重視するのは当然、ワイヤーを使ったさまざまなトリッキーな動きだけでなく、屈強な男たちの力と力のぶつかり合いまで迫力十分。特に香港風とタイ風、アメリカ風のテイストが巧みに融合した新鮮でスピーディな格闘術の数々が目を楽しませてくれる。


犯罪組織のボス・ベガに父親を拉致されたチュンリーは、不思議な巻物を手に入れたことからバンコクにいるゲンという男を捜す。ゲンは拳法の達人で、彼の元に弟子入りしたチュンリーはさまざまな技を学び精神を鍛えていく。その一方で、復讐の機会を狙ってベガの身辺を調査する。


バンコクに渡り、ゲンに出会うまでのチュンリーは、さながらホームレス並みの生活をしながらスラムをさまよう。それはまるで「ゲン探し」のような「自分探し」の旅。香港での裕福な暮らしに慣れたチュンリーにとっては、貧しさが支配する世界で人間同士のふれあいを感じていく。人情に触れ、弱い者の悲しみを知る過程で成長していくと共に、心の内に燃え盛る感情をコントロールする方法も身につけていくのだ。


ベガが良心をすべて娘に転移させ、自らは悪の権化となるというエピソードが笑える。ベガは娘を手元に呼び寄せてどうするつもりだったか。また、悪になりきっているのならば娘を手にかけるくらいの凶悪ぶりを発揮してもらいたかったが、娘の前では結構普通のパパ。娘のほうも父親の善意を受け継いだだけあって育ちはよさそうだ。しかし、せっかく再会した父親を目の前でベガに射殺されたチュンリーは、クライマックスの一騎打ちで娘が見ている前でベガの首の骨を180度ひねるという荒業で止めを刺す。これでは怒りを制御するどころかベガと同じレベルではないか。チュンリーはゲンからなにを教わったのか。そのあたり、物語にも東洋的な思想を交え、戦いや殺し合いからは何も生まれる虚無感を描いて欲しかった。。。


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