こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと

otello2009-03-22

マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと MARLEY AND ME


ポイント ★★★
DATE 09/3/18
THEATER YAH
監督 デヴィッド・フランケル
ナンバー 65
出演 オーウェン・ウィルソン/ジェニファー・アニストン/エリック・デイン/アラン・アーキン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


結婚、転職、出産、昇進、さらに増える家族、そしてキャリアアップ・・・・・・ひとつの家族の歴史にずっと寄り添ってきた一匹の犬が、飼い主に与えたものは「愛する心」。人間に忠実にあろうとするが、時に本能を抑えきれずに暴走するデキの悪い犬でも、節度を持ってかわいがってやれば必ず応えてくれる。映画は、犬の気持ちを分ってやろうとするが完全に理解できるわけはないというスタンスで、「犬目線」を交えずに主人公の夫婦の視点を貫く。いたずらにお涙頂戴にしないところがよかった。


新婚のジョンとジェニーは子供を持つ予行演習に犬を飼いはじめる。バーゲンで買ったラブラドール・レトリバーにマーリーと名づけるが、とんでもないバカ犬で飼い主の命令をほとんど聞かない。訓練校も追い出され、夫婦は仕方なく家で躾ける。


いつもリードにつながれている犬にとって、思いっきり走ることもままならない生活はストレスだらけのはず。マーリーは他の犬より野生が残っていたのだろう、走れない代わりに家具を噛みテーブルをひっくり返す。そんなマーリーをジョンとジェニーは温かく見守っているのだが、ジェニーに二人目の子が生まれた頃から空気が変わり始める。ジェニーにとってやはりマーリーより自分の子が大切。ジョンは仕事に出たまま、ベビーシッターもマーリーのせいで来てくれない。ジェニーが日常で抱えているイライラを爆発させるシーンが、キャリアを捨て家庭に入った女性の心情をリアルに再現する。


一方のジョンも、コラムニストとして成功しながらもジャーナリストとして名を上げた友人がうらやましくてならず、会社を変わる。仕事と家庭に手を焼きながら夢もあきらめきれない男の中途半端な状況も細かく描かれていて、単なる愛犬モノとは一線を画している。物語の中心にマーリーを据えてはいるものの、あくまで主人公はジョンとジェニーなのだ。原作は新聞記者のコラム、登場人物の感情をきちんと描写し、犬を飼った経験のない人も共感できる構成は非常に好感が持てた。


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