こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

トワイライト〜初恋〜

otello2009-04-06

トワイライト〜初恋〜 TWILIGHT

ポイント ★★★
DATE 09/4/4
THEATER THYK
監督 キャサリン・ハードウィック
ナンバー 79
出演 クリステン・スチュワート/ロバート・パティンソン/エリザベス・リーサー/ニッキー・リード
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愛ゆえに一緒にいたいと願う女と、愛ゆえに女と距離を取ろうとする男。そして、どうしようもなく魅かれあうふたりの間に横たわる越えてはならない一線。禁断の関係は甘い香りを放ち、彼らをより過酷な運命にいざなってゆく。人間とヴァンパイア、身を焦がすような気持ちが強くなればなるほど、自制を求められるという皮肉。心は固く結び付いていても、決して体を求めてはいけない。その思いが純粋であるだけに葛藤が深まっていく。ブルーが基調の寒々とした映像は不老不死を得ても安らぎのないヴァンパイアの感情を象徴し、永遠の命は希望より苦悩をもたらすだけであると悲嘆するようだ。


小さな町の高校に転校したベラは、学校にカレン兄弟という不思議な生徒がいるとを教えられる。その1人、エドワードが気にかかるが、なぜかエドワードはベラを避ける。ある日、ベラがミニバンに轢かれそうになったのをエドワードが救ったことからふたりは急接近する。


人間と共存し、人血への欲望を抑えて生き永らえるヴァンパイア像が新しい。正体を隠してコミュニティに参加しつつも、住民に溶け込むんだりはせず、動物の血で飢えを満たしながらひっそりと暮らす。老いない肉体と驚異的な運動能力だけでなく、他人の思考や未来も予知できる。そんな超人的な能力を手に入れても、無限の時間を過ごす彼らにとって、人生とは無為な行為の繰り返し。唯一の娯楽である風変りな野球で思い切りストレスを発散させるシーンが、彼らの哀しみを強調している。


一途な情熱に突っ走るベラはヴァンパイアになりたいと望むが、エドワードにとって彼女に応えるのは怪物に堕ちること。理性と本能の狭間で揺れ動くエドワードの心理がリアルだ。別のヴァンパイアに咬まれたベラの毒を吸い出しても血は飲まない、エドワードは強固な意志で克己するのだ。叶わないから燃え上がり、幸せになれないから命を懸けるという、愛の本質を見事についていた。


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