こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・バンク−堕ちた巨像−

otello2009-04-08

ザ・バンク−堕ちた巨像− THE INTERNATIONAL


ポイント ★★★*
DATE 09/4/6
THEATER 109KB
監督 トム・ティクヴァ
ナンバー 80
出演 クライヴ・オーウェン/ナオミ・ワッツ/アーミン・ミューラー=スタール/ウルリッヒ・トムセン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


倫理より利益、公益より権益の確保を優先させる巨大バンク。その食指は名だたる武装組織だけでなく各国政府にまで深く食い込み、秘密に触れた者は次々と消されていく。暗殺者の手は民間人だけでなく警察官・政治家にまでおよび、計画を邪魔する者だけでなく非協力的な者まで容赦しない。そして、経済のグローバル化を背景に戦争や地域紛争で儲けた上、陰から国家を支配することでさらなるカネと権力を得ようとする。映画は欧州からNY、さらにトルコにまで舞台を広げ、企業家という仮面をかぶった金融マフィアの陰謀を暴いてゆく。


武器購入に絡む極秘情報提供者であるIBBCの行員と接触したインターポールの捜査官が毒殺され、同僚のサリンジャーが捜査に乗り出す。サリンジャーはNY地検のエラと共にイタリアの政治家・カルビーニと面会するが、カルビーニもまた暗殺されてしまう。


暗殺はすべてコンサルタントという男の仕業なのだが、義足の足跡からサリンジャーらに正体がばれ、今度はIBBCのターゲットにされる。美術館の螺旋廊下で繰り広げられる壮絶な銃撃戦は息つく間もない緊迫感を生み出し、無数の銃弾が穿つ穴がリアリティを演出する。わずかな失敗も許されない掟の中で生きる殺し屋たちと、快適なオフィスでビジネスについて話し合うIBBCの幹部たちの「悪の中の序列」の対比が鮮やかだ。


利潤追求に節操のないIBBCに対して、自分の良心に従って行動するサリンジャーと信義のために動くIBBCの警備担当者といった、正義の心をいまだに残している人々のおかげでIBBCの企みは阻止される。謎が謎を呼び、小さな手がかりを積み重ねて真実に近づいてゆくというミステリーの手法と、すれ違いざまに毒を注入する地味な暗殺から衆人環視の中での狙撃、戦場のような派手な撃ち合いまで、ドラマとアクションの緩急が巧み調合され、テンポのよい語り口は最後までテンションが落ちない。非常によく練られた脚本とムダなシーンをそぎ落とした展開は、一瞬もスクリーンから目が離せなかった。


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