こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キッチン〜3人のレシピ〜

otello2009-04-23

キッチン〜3人のレシピ〜

ポイント ★★
DATE 09/4/10
THEATER SG
監督 ホン・ジヨン
ナンバー 84
出演 チュ・ジフン/シン・ミナ/キム・テウ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


夫との仲は円満なのに、突然出会った若い男と稲妻に打たれたように魅かれあう。しかもその男は夫のかけがえのない友人。好きになってはいけないと分かっていても心の暴走を止められない妻、妻の隠しごとに感づいていても現実を認めたくない夫、先輩の妻に運命を感じてしまう男。愛と友情と嫉妬、いつしか3人の関係はこじれ、選択を迫られる。陽光が降り注ぐ幸せな朝食から雨の夜の気まずい食卓まで、料理を通じて繊細に描かれる不器用な男女の気持ちのうねり。食事をおいしく味わえるかどうかは幸福の尺度なのだ。


サンインとモレは結婚一年、ある日モレは陶器展で偶然一緒になった男に身をゆだねてしまう。一方、証券会社を辞めてレストランを開こうとするサンインはパリからシェフのドゥレを呼び寄せる。モレは陶器展の男がドゥレと知って動揺するが、ドゥレが居候するようになってふたりだけの時間を楽しむようになる。


満ち足りた生活を送っているのに、なぜモレはサンインとドゥレをもてあそぶようなことをするのか。一度目は弾みで済まされるが、その後もドゥレの気を引くような振る舞いを平気でとる。キス写真などという証拠を残したり、サンインのすぐ隣で舞踏鑑賞中に手を握らせたりと、まるでサンインと築いた幸せを自ら壊そうとしているかのよう。その結果、サンインは疑心暗鬼にとらわれ、ドゥレも冷静さを失っていく。2人に妊娠を報告するシーンがあるが、当然サンインはそれが自分の子であるかどうか疑い、ドゥレもどうしていいのかわからない。モレの歪んだ正直さは、ただのバカ女にしか見えなかった。


やがてキス写真がサンインに見つかり、サンインはドゥレを殴る。サンインとドゥレ、どちらをとるか決断を迫られるモレ。しかし、ここでも男2人を仲直りさせようとした挙句、やっと自分の行動が2人を苦しめていたことに気づいて、どちらも選ばずに姿を消す。騒動の種をまき、火に油を注いでおきながら、あくまで悲劇のヒロインになろうとする幼稚なメンタリティ、そんなモレにはついてゆけなかった。


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