こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

GOEMON

otello2009-04-25

GOEMON


ポイント ★*
DATE 09/4/21
THEATER SKNH
監督 紀里谷和明
ナンバー 94
出演 江口洋介/広末涼子/大沢たかお/ゴリ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


実写とCGの合成、赤を強調した色彩、時代考証を無視したきらびやかな衣装や風俗、権力の強欲を象徴する大坂城天守閣。それら視覚に訴える圧倒的な情報量はコンピューターゲームのような質感で、壮大なデジタル紙芝居を見ている気分だ。せっかく俳優が演じているのにあえて人間くささを取り除くことにどれだけの意味があったのか。愛と友情、怨念と復讐の入り混じったファンタジーにする予定が、現代語で語られるセリフと楽市楽座と呼ばれる経済の自由化によって格差社会になったという21世紀的な話題を無理矢理ねじ込んだせいで、もともと薄っぺらな世界観がさらに安直な印象になってしまった。


天下を平定した秀吉が我が世の春を謳歌していた時代、盗賊の石川五右衛門が商家から南蛮渡来の箱を盗み出す。それを追って石田三成配下の才蔵が刺客として送り込まれてくる。箱には秀吉政権を覆す重大な秘密が隠されていて、三成のほかに家康もその動向に関心を寄せていた。


手裏剣や爆弾、矢などの飛び道具だけでなく、五右衛門や才蔵も超人的な跳躍や剣さばきをみせる。その動きは本来実写の部分も多いのだろう、しかしすべてがCGに見えてしまう。これが20世紀に製作された映画ならば「驚異の映像」といわれたはずだが、CGっぽさを前面に押し出すのはかえって一周遅れの先頭を走っているような古臭さすら、今となっては感じるのだ。


ストーリーも、本能寺の変の陰に光秀と秀吉の密約があったという着想はよいのだが、五右衛門と才蔵が服部半蔵の弟子だったり、五右衛門が茶々の警護役だったなどのばかげた設定のために大前提が崩れてしまう。ホラ話をリアルに見せるためにはディテールが肝心だということを作者は知らないのだろうか。しかもクライマックスの関が原の合戦は、三成軍と家康軍が正面きって対峙する芸のなさ。小手先の器用さに溺れてしまい、表現ばかり奇をてらった内容の空疎な作品だった。


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