こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バビロン A.D.

otello2009-05-13

バビロン A.D. Babylon A.D.

ポイント ★★*
DATE 09/5/10
THEATER THYK
監督 マチュー・カソヴィッツ
ナンバー 110
出演 ヴィン・ディーゼル/ミシェル・ヨー/シャーロット・ランプリング/メラニー・ティエリー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ゴロツキどもがうようよする荒廃した街並み、人里離れた岩山に掘られた修道院、死の灰に覆われた放射能汚染地域、そしてツインタワーが復活したニューヨーク。舞台となる近未来の地球は、東欧からシベリアを経て米国に移動する過程で、暴力による混沌からより洗練された支配に変貌を遂げる。そこでは、現在よりはやや発達したテクノロジーの反面、道徳は地に堕ち、人間そのものの生きる力を試されているかのよう。そんな時代を自らの頭脳と肉体だけを頼りに生きてきた傭兵が、新たな任務で人類の行く末を予見するかのような事件に遭遇する。


モンゴルの奥地からNYまでオーロラという名の少女を移送する仕事を請け負ったトーロップは、少女の保護者・レベッカと共にカザフスタンに向かう。駅の雑踏で爆弾テロを予知したオーロラはその後も不思議な能力を垣間見せる。


中央アジアからシベリア、カナダと旅を続ける途中で、オーロラの正体が明らかになってくる。一方でオーロラの横取りを試みる一団とも遭遇、トーロップは身を盾にしてオーロラとレベッカを守る。アクションには新鮮味はないものの、ヴィン・ディーゼルの体を張ったパワフルな動きは見ごたえがあった。また、オーロラの身柄を確保しようとする宗教団体リーダーが神秘的で、カルト集団が科学を研究する恐ろしさがよく描かれている。


結局トーロップはすべての敵を倒してオーロラを守り通すが、その辺がばっさりと編集されている。ミサイル兵器を持つほどの宗教団体をトーロップがどのようにして倒したのかや、オーロラが生んだ肌色の違う双子の本当の父親は最後まで明かされない。ラストシーンは、宗教団体との抗争の果てにほとんどの人は死に絶え、世界再生の出発点を描いているようにも思える。大胆な省略はイマジネーションを刺激するが、この作品の唐突な終わり方は、表現上のテクニックというより予算オーバーか撮影時間切れではないかという製作ウラ話的なゴシップを想像してしまった。


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