こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ターミネーター4

otello2009-06-08

ターミネーター4 Terminator Salvation


ポイント ★★★*
DATE 09/6/6
THEATER THYK
監督 マックG
ナンバー 133
出演 クリスチャン・ベイル/サム・ワーシントン/アントン・イェルチン/ブライス・ダラス・ハワード
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人類の行く末を予見するような色彩の乏しい世界、地上はコンピューターとロボットに支配され、生存者は息をひそめるか抵抗軍に参加するしかない。「ターミネーター」とタイトルに冠しているが、あくまで絶望的な状況で戦い続ける人々が主人公。戦闘型ロボットの迫りくる恐怖よりも、抵抗軍リーダーの勇気と機械の体を持つ男の葛藤を通じて、人間にとって生きる価値とは何かを問う。命を捧げてまで守り通したいもの、それは誇り高さと未来への希望。3人の男たちの戦いの中で、感情の持ち方が人間を定義し、運命を切り開くカギであることを描く。


反乱軍を率いるコナーはスカイネットの基地を攻撃するが、逆襲に会う。そこで、サイバーダイン社に献体した元死刑囚・マーカスが復活する。マーカスはゲリラ戦を展開するカイルと出会い行動を共にするが、カイルはロボットの捕虜となってしまう。


未来から送られてきた殺人マシーンからコナーと血縁者を保護するというこれまでのパターンと矛盾を捨て、マーカスという機械のボディに脳と心臓を移植されたハイブリッドを過去からの贈り物としてコナーは受け取る。これは「ロボットではコナーを倒せない」と考えたサイバーダイン社の謀略なのだが、自分が人間であると思っているマーカスは真実を聞かされてもなお人間であろうとする。「機械は死者を放置するが人間は埋葬する」という仲間を悼む気持ちに機械と人間の違いを教えられて、己の罪を贖う気になったのだろう。彼の自己犠牲でコナーは救われ、救済の糸が繋がれるシーンは、心こそが人を人たらしめるという鮮やかな人間賛歌となっている。


コナーは、“I'll be back”という口にしてカイル救出に向かう。かつてシュワ型ターミネーター=T-800がコナーに残した言葉と同じ、使命に忠実である証であるとともに、生きて帰ってくる約束。コナーは母の預言テープで未来がどうなるかはある程度知っていたはず。それでも、そんな予定された未来よりは、不確定でも自らの力で勝ち取る道を選ぶのだ。過去3作と一線を画しながらも、それらの苦悩が圧倒的な迫力とスピードで迫る映像に命を吹き込むことに成功している。


↓メルマガ登録はこちらから↓