こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サンシャイン・クリーニング

otello2009-07-13

サンシャイン・クリーニング SUNSHINE CLEANING


ポイント ★★★
DATE 09/7/11
THEATER THYK
監督 クリスティン・ジェフズ
ナンバー 165
出演 エイミー・アダムス/エミリー・ブラント/アラン・アーキン/ジェイソン・スペヴァック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ヤマ師のような父、注意力散漫な妹、身の回りの物をなめる癖をもつ息子。そんな風変りな家族に囲まれて、ハウスクリーニングでつつましく生きるヒロインが健気だ。かけがえのない絆で結ばれた人間同士の濃密な関係、それは頼りになる一方で足かせにもなる。映画はシングルマザーの奮闘を通じて、一生懸命頑張れ希望が見えてくるということを描く。高校時代は学園のスターだったヒロインが元同級生の前で精いっぱい見栄を張る姿が泣かせる。


不倫相手のマックから犯罪現場の後始末を頼まれたローズは、これを事業化して妹のノラとともに「サンシャイン・クリーニング」を立ち上げる。仕事は順調に軌道に乗るが、ある日、突然頼まれた街外れの一軒家の掃除にノラを一人で行かせてしまう。


一家はみな、世間的に見れば低学歴低収入まともな家庭を持てない「負け組」。しかしその状態を環境のせいにしないどころか、ローズもノラも父親も決して他人からの援助を受けずに自分の足で生活しようとする。しかもローズと父親はたいしてノウハウがなくとも起業し、誰かに雇われるという生き方を潔しとしない。失敗しても何とかなる、チャレンジし続ければきっといつか成功するという楽天的な発想が素晴らしい。


ただ、ノラのトラウマとなっている母親の死について、もう少し突っ込んでほしかった。ノラは仕事先で、孤独死した老女の持ち物の中から故人の娘の写真を見つけ、写真を被写体本人に届けようとする。その過程で、ノラは老女の娘・リンと仲良くなるのだが、このリン母娘の断絶の原因を詳らかにしつつノラとノラの母の間に横たわる秘密を解き明かすと思わせて、結局はノラの母はウエイトレス役の女優だったという事実が示されるだけ。伏線だけ張ってオチがないのは脚本の仕掛けとしていかがなものか。母親の不在がノラだけでなく、ローズや彼女たちの父親を含むファミリーの「ピースの欠けたパズル」のような現在に大きくかかわる物語のポイントになっているだけに、この省略は奥歯に物がはさまったようなもどかしさが残った。


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