こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エリック・クラプトン&ジェフ・ベック LIVE the MOVIE!

otello2009-07-24

エリック・クラプトンジェフ・ベック LIVE the MOVIE!

ポイント ★★
DATE 09/7/22
THEATER IMGC
監督 マーティン・アトキンス/ステュアート・ワッツ
ナンバー 174
出演 エリック・クラプトン/ジェフ・ベック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


小ぶりなライブハウスとマジソン・スクエア・ガーデンという大きな会場。この2つのステージで行われた、指先の超絶テクニックでギターをかき鳴らす2人の男のライブを再現する。デジタル録音されたサウンドはプレイヤーが眼前にいるかのような大迫力で、その圧倒的なボリュームは鼓膜を破らんばかり。ジェフ・ベックのバンドのドラマーや最前列の客が耳栓をしていたが、これらの映画を見る観客も耳栓は持参したほうがよい。それでもスピーカーから放たれる地鳴りのような振動は椅子ごと体を揺らし、脳髄をシェイクされる感覚は十分に味わえる。


ジェフ・ベック ライブ・アット・ロニー・スコッツ


ギターの弦をつま弾くベックの右手のアップが何度も挿入される。ときどきレバーを操作して共鳴を微妙に変化させて、奥行きのあるメロディを自在に操る様は神業の域だ。そこから奏でられるのは、怒り、悲しみ、疑惑、恋の予感、緊張、欲望、焦り、期待といった人生のあらゆるシーンにおける人間の感情。そして最後には心の平安に到達する曲の構成には頭の下がる思いだった。


エリック・クラプトン ライブ・フロム・マジソン・スクエア・ガーデン


こちらは08年2月、クラプトンとスティーブ・ウィンイッドのジョイント。最初はスローな曲ながら、徐々に2人はお互いを刺激しあいあうようにヒートアップし、ギターの弦を攻め、マイクに向かって絶叫する。そのパフォーマンスは激しさこそないものの円熟した老成の境地に達した名人芸を見ているよう。ファンも同年代のじいさんばあさんはほとんどおらず、彼らの子供や孫の年頃ばかり。このあたり2人がもはや世代を超えた「伝説」となっていることがうかがえる。


両作品とも、ライブステージを複数のカメラで撮りながら現場の熱気をスクリーン投影しようとしている。しかし、カメラ位置に制限があるため、M・スコセッシの「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」のような縦横無尽のカメラワークによる映像のマジックには遠く及ばず、やや単調な印象は否めない。また、ナレーションや字幕による解説も一切なく、観客はいきなりライブ会場に放り込まれた気になるので、心の準備をしておいたほうがよい。いずれにせよ、クラプトンやベックのファンなら垂涎のお宝映像だが、このタイプの音楽に関心の低い者が見るべきではない。


↓その他上映中の作品・メルマガ登録はこちらから↓