こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ

otello2009-08-01

アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ

ポイント ★★★
DATE 09/7/30
THEATER ASM
監督 パトリック・アレサンドラン
ナンバー 181
出演 シリル・ラファエリ/ダヴィッド・ベル/ダニエル・デュヴァル
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


圧倒的な跳躍力を備えた男と超人的なマーシャルアーツを身につけた男。陰謀に巻き込まれた2人か窮地に追い込まれたとき再び手を組む。人間の運動能力の限界に挑むかのような見せ場の連続はこの作品でも健在、鍛え上げられた身体のパフォーマンスはワイヤーアクションがはるかに及ばない美しさを示してくれる。今回はさらに警察機構への反感を軸に、自由に生きる権利の大切さを訴え、虐げられたマイノリティが力を合わせて巨大な悪に立ち向かう場面は圧巻。重武装した警官相手でも銃器を一切使用せず、己の肉体のみで戦う姿はすがすがしさすら覚えた。


外国人グループが犯罪者集団を作っているパリ13区で警官虐殺事件が起きる。しかしそれはガスマンという政府高官がゲットー一掃のために仕組んだ罠。それに気付いたダミアンは逮捕され、レイトに救援を求める。


パリ郊外のイスラム系コミュニティで暴動が起きたという記憶も新しい中、映画は不景気に職を奪われ犯罪に手を染めるしか生きていくすべを持たない移民の立場を理解する優しさを持つ。13区内で起きたことはその中で解決すれば、パリ警察は特に介入しない。もちろんパリ市内で暗躍する麻薬密売組織に対しては、フランス人ディーラーも含めてダミアンは一網打尽にする厳しさを持つ。そのあたりの異民族異教徒に対するフランス人の考え方、フランスのルールを守って暮らしている分には居住を認めるが、決して正統なフランス人と認めたわけではないという、自由・平等・博愛を国是とする国家の本音が透けて見える。


13区に出された破壊命令を解除するために、ダミアンとレイトは移民から精鋭を募り、混成部隊を編成してガスマンが指揮する作戦本部を急襲する。壁を登り窓を突き破った彼らは自動小銃を構えた警官隊を素手で倒してゆく。決して血なまぐさい表現に走らずに、あくまで格闘技を中心としたアクションで観客を魅了する。特に中国系の女ボスが見せる、三つ網ヘアに刃物を仕込んで舞うような体術で警官を倒していく様は芸術的な優雅さすら感じさせ、パワーとスピードだけではない新しい可能性を見せてくれた。


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